カジノと調達・購買業務(坂口孝則)
シンガポールはカジノを誘致し一大レジャーランドを創り上げました。正確には、IR(統合リゾート)といいます。なぜなら厳密には、カジノとIRは異なるからです。IRにしてみれば、カジノは一部でしかありません。
シンガポールではIR総面積の5%以下がカジノであり、その他はエンターテイメントショールームや、ビジネス会議、ホテル、プールなどが立ち並んでいます。また、そのなかでもカジノについては、自国民の入場に制限をかけており、どちらかという外国員観光客向けの色彩が強いのです。
ただ、全体の利益はどこから発生しているかというと、やはりカジノです。カジノの利益によって、IRの多数は運営されています。たまにショーは、無料で観覧できます。他の施設も同様です。
また、カジノのなかで分析すると、お客のなかでも、そのほとんどの利益は、上客です。つまり掛け金が、一般人レベルから超越したひとたちです。一晩で何百万円から何億円まで溶かすひとたちです。つまり、IRの運営がまわるのは、カジノ、そしてそこに集う少数のひとゆえなのです。
ここで暴言を申しますと、カジノは社会再分配システムとなっているのです。社会の格差は存在しますが、一部の金持ちからの還元が、きわめて不思議(だってエンタメですからね)な構造の、再分配です。暴論でした。
ところで、ここであえて話を飛躍させたいのですが……。
このところ各企業で原価率などを分析していると、奇妙なことに気づきます。販売額に対する各製品の原価率があまりにばらばらなのです。それは調達・購買部門の責任というよりも、売価が製品によってあまりに違うのです。売れる最終製品は、そこそこの利益ですが、売れない最終製品はがんがんに売価を下げているのです。
だから、儲かる製品と、儲からない製品の差があまりに激しくなっているのです。原価率がバラつくのはそのせいです。過去と比較しても、なんでも売れる時代ではありませんから、当然といえば当然の傾向かもしれません。
では、儲からない製品の生産は止めればいいではないか。はい、だから、これまで多くの企業は不採算事業を切り捨てました。私がいいたいのは、事業単位ではなく、同一事業のなかでも、儲かる製品と、儲からない製品の差があまりに激しくなっているという点です。
とはいえ、製品ラインナップをあるていど揃えておくのは企業として必須ですから、儲からないといって製品の生産を止めることはあまりありません。
ということは、どんどん企業の稼ぐ体質がカジノ化しているのです。儲かる製品で稼ぎ、あとは、(現在は)儲からないかもしれないけれど意義のあることや、次世代の豆まきをする。調達・購買業務はこれから、互恵業務に転換していくのです。
調達・購買とは、もはや、企業内再分配システムと同義になりつつあるのです。
今回の話、難しかったらごめんなさい。