働き方改革と口先だけの企業と調達部門(坂口孝則)

以前、コンサルティングの現場でのことです。エクセルを使って、コスト分析や、要因分析をするのに、ソフトを買ったら早いとわかりました。価格は1万円です。それを使えば、たぶん、素早く分析が可能となります。アマゾンでも販売しています。

1万円を高いと思うか、安いと思うか。これは委ねます。ただ、この1万円のソフトについて、「買う価値があるものか、実際にシミュレーションを見せてもらいたい」「ネットで買って役に立たなかった、では困るので、営業のひとから詳しく説明を聞きたい」と意見が出ました。

いや、たったの1万円ですよ。営業にわざわざ来るはずがありません。それに、社員の給料は一人1万円以上が垂れ流されています。なぜ即決できないのでしょうか。さらに「相見積を取らねばなりません」といいます。いや、相見積の比較を作る人件費のほうが、はるかに高くつきますよ。

さらには、ソフトを買うのであれば、稟議が必要だ、といわれました。それも稟議に関わるひとたちのコストがずっと高いにもかかわらず、です。

こんな話をすると、「いや、たとえ1円であっても、厳密な価格での購入が大事だ」という意見もあるでしょう。ただ、私がしているのは、そんなレベルの話ではありません。

私は「それなら、私がポケットマネーで買って差し上げますから、試してみましょう」と提案しました。すると「それは困る」といわれました。「それなら、坂口さんのコンサルティング日数を増やしてくれないか。そのぶんで間接的に支払える」と逆提案すら受けました。しかし、それにしても、なんとムダなことをするのでしょう。

いや、繰り返し、私は調達・購買コンサルティングに従業していますから、1万円のソフトを購入する際に、丁寧に比較する重要性は承知しています。ただ、稟議をぐるぐるまわして、やっと数カ月後に購入するのと、即決するのは、どちらが良いでしょうか。

私は、おそらく、みんな、本気で働き方改革なんてする気がないんだと思います。どうせ、実態は何も変わらないのですから、稟議書なんて辞めてしまえばいいではないですか。ソフトを1万円で買って、効果がなければ、誰かが責任をとればいいじゃないですか。無責任体質が蔓延すると、きっと若手も、命を賭して仕事にあたらなくなるでしょう。

逆に、少額であれば、どんどんトライして、PDCAをまわす企業がいます。これは絶対に成長します。ダラダラと議論を重ねても、ほとんど結論は変わりません。それなら、得策は、なんであれ即決することです。

誰もが、学校を卒業して入社したとき、会社のあまりの不合理さや非効率さに辟易したはずです。しかし、数年が経ってみると、それに適合してしまっています。あんなにクソ長い会議は必要なのか、社内向けの資料はほとんどムダではないのか。そういった、常識から考えれば、いまの業務などいくらでも見直せるはずです。

そして私が思うに、重要なのは、「何かをはじめる」のではなく「何かを辞める」勇気です。

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