調達部員が、設計部門の役員を訴訟したらどうなるか(坂口孝則)

以前、フィリピンに行きました。ついでに知人にお願いしてカジノに連れて行ってもらいました。その知人はVIPルームに入る権利をもっているのです。そこで、世界中の金持ちたちによって、数億円、数十億円が一度に賭けられている様子を目の当たりにし、頭がクラクラしてきました。こういう世界もあるのですね。

こういうカジノが大阪などにできるかもしれません。私はシンガポールやフィリピンにもあるのに、日本にカジノを設立する効果があるのか不明と思ってきました。しかし、帰国後に知人に話すと、「凄い効果があるはずだ」といいます。なぜなら、富豪が家族でカジノに向かう際、夫はカジノ、妻と子供が観光、というのが一般的なパターンらしいのです。しかし、日本ほど観光や食事を楽しめる国はない、絶対に日本しか行きたくないというはずだ、と予想していました。

私が考えたこともなかったため参考になりました。常に、違った角度から考えることが大切なんですね。

以前、私が電気自動車の将来について某誌に原稿を書いたことがあります。よく「これからはモーターとバッテリーさえあれば自動車を生産できるようになる」といったたぐいの文章を見ますが、あれは自動車の生産ラインをまったく知らない阿呆でしょうね。数万台でも苦戦しているのに、数百万台規模をたやすく生産できるはずはありません。くわえて、原稿を書いたあとに聞いたのですが、ある銅山開発会社のひとにいわせれば、「電気自動車は大量の銅山を必要とする。世界規模で銅山開発をするのは現実的ではない」といっていました。

これもつねに考える視点を変える大切さを教えてくれました。

昨年、中国で上海や重慶がマイナス成長になったことが伝えられました。しかし、中国経済のプロにいわせると違うらしい。習近平が量より質の経済政策を打ち出し、「各省は経済成長率を水増しする必要がなくなった」のが実際のようです。ずっと水増しが進んできたため正常化しただけだといいます。

きっと私たちも調達・購買業務の常識にがんじがらめになっていて、ちょっと視点をズラすだけで、だいぶ違う世界が広がっているに違いありません。

たとえば、よく「設計部門が調達部門が勧める安価な製品を採用してくれない」とか「設計部門が勝手なことばかりする」といった話を聞きます。もし調達部門に従ったほうが全社方針に沿っているというのであれば、調達部門が自社株買いしたあとに、その設計部門の執行役員を訴訟すればいいのではないでしょうか。会社は株主のものであり、株主が全社方針を承認します。全体の利益に反する場合は、対象者にたいして株主代表訴訟が可能です。

「そんなこと考えたこともなかった」と誰もがいいます。そう思って、申し上げているのです。そして、そうやって視点を変えるとさまざまなものが見えてくるはずです。そもそも、「調達部門が設計部門に製品を推奨するほど、技術知識はあるだろうか」とか。

現在、もっとも怖いのは、硬直化した視点からの思い込みだ、と私は信じています。

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