第九回:開発購買実施で強化すべき知識とスキル
調達・購買部門として、もしくは開発購買グループがイニシアティブを取り、開発購買の実効性が高い業務を実施するための知識・スキルを特定して、それを強化するために教育訓練プログラムを展開する必要があります。
1. 知識・スキルの強化での留意点
知識・スキルの強化では、次の説明の通り、体系的に実施することが必要です。
(1) 方法の特定:上司や他部門によるOJT, 社外セミナーなどのOff-JT、それと最も重要な方法として、自己啓発があります。
(2) 経験別・職位別の実施:経験や職位によって求められる知識・スキルの水準は異なります。この水準に応じた教育・訓練のプログラムを策定する必要があります。
(3) 計画的な実施:数年計画や年度計画を策定して、計画的に実施することが必要です。
2. 開発購買の知識・スキルの3つの分類と具体例
開発購買をはじめとした、ビジネスに携わる人たちに求められる知識・スキルは、①業務を遂行する上に必要なもの、②人関係構築に必要なもの、そして③戦略策定、業務改革などに必要なもの、という3種類があります。上位職になるほど、②の割合、そしてさらに③の割合が大きくなります。ここでは、3つの内のまず①を主体に述べます。
調達・購買の業務遂行に必要とされる知識・スキルは、いうまでもなく、すべて開発購買にも求められます。ここでは、その調達・購買の知識・全般ではなく、開発購買の業務遂行に特に関連する知識・スキルを述べます。
(1) 開発購買機能実行に必要な知識・スキルの概要と目的等は以下の通りです。
製品開発プロセス関連
① 製品開発の開始から量産開始までのプロセスの知識:開発購買として、具体的にいつ、何をすべきなのかを知るために必要な知識であり、開発・設計部門との連携活動で必要な基本的な知識の一つです。
② 開発プロセスで開発購買がすべきこと:上記の①を基に検討した、開発購買がすべき具体的な活動事項です。製品開発プロセスで開発購買が何のために、どう貢献するのかを理解するために必要です。
当社の製品と市場
③ 当社製品の対競合品と比較した際の特徴
④ 当社製品の市場と競合会社:開発購買はまず当社の製品とその市場を理解することから始まります。③と④は、そのための基本知識です。
当社製品の主要部品とその取引先市場
⑤ 当社製品の機能(部品・材料ブロック)と機能ごとの主要部品・材料:上記③で理解した当社(並びに競合会社)の製品知識を、製品を構成する機能を通じて、開発購買が取り組む主要部品・材料につなげるものです。開発・設計部門との連携活動ならびに調達・購買取引先との関係強化や新規開拓に必要な基本知識です。
⑥ 主要部品・材料の調達・購買取引先市場
⑦ 主要部品・材料に関する知識(製造法、仕様・構造など):調達・購買品のコスト・品質・納期(開発・設計期間で必要な知識)
⑧ コスト低減
⑨ 品質保証・管理の基礎
⑩ 生産管理の基礎
以下の(2)と(3)で、その他2種類の知識・スキルの概要を述べます。開発購買の視点から補足してあります。
(2)人関係構築力
①連携する力 ②協力者・部下などの能力を引き出す力 ③良好な人間関係を維持し発展させる力 ④リーダーシップを取る力、等のことです。
開発購買を実行する面では、目標達成のために人間関係と通じて、社内では他部門(特に開発・設計部門)と連携する力、対外的には調達・購買取引先の技術力やアイディアを引き出す力、等を意味します。
(3)課題解決・改革力
①体系化する力 ②問題を発見し解決する力 ③業務を改革する力 ④戦略を立案する力、等のことです。
開発購買の業務では、これまでの経験(とくに失敗)からの学びを体系化する力、開発購買の戦略・中期計画を策定し実施する力、取引先評価全般(経営、技術、製造、品質、財務)を合理的に行う力、開発購買の貢献や付加価値を強化するために、現状の仕組みなどを変革する力、等を指します。
→2018年7月24日(火)に「開発購買セミナー」を実施しますのでご興味があればご覧ください。
著者プロフィール
西河原勉(にしがはら・つとむ)
調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士
総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験
・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)