連載6回目「購買はモノを買ってXXを売る」~自然災害の多発で思うこと (調達・購買のリスクマネジメント)その3

今回は、調達・購買経済活動や事業活動でのリスクでの「想定外」について述べます。想定外での対策のポイントでの第一には、「想定外の比率を小さくすること」です。ならびに、万が一「想定外」が発生してしまった時に、「その影響を小さくすること」です。この想定外は、様々なものがあります。

CQDに関連したものでは、想定外の「コスト上昇、品質問題発生、納期遅れ」、などです。取引先関連では、倒産が代表的な例です。倒産については、その事前対策や事後対応などについての書籍やセミナーがあり、会社単位でも調達・購買部門と法務部門が中心となって、対応策を策定していると思います。

ここでは、取引先関係について、その事業撤退に関する想定外について述べます。企業経営環境の急速な変化や企業活動のグローバル化などに伴い、購買業務のなかで取引先が、ある事業から撤退する状況に直面する可能性も高まっています。

取引先がある事業から撤退すると、その事業の関連部品・材料などの供給が止まります。そのため、購買部門をはじめとした、関連部門は代替取引先を探したり、設計変更したり、新規取引先候補の部品・材料の試験や試作などの検証をしたりなど、さまざまな活動を短期間に行わなければならない事態となります。

事業撤退には、様々な種類があります。複数事業を展開している企業によるある事業からの撤退、企業買収・合併後の戦略などによるある事業からの撤退、新規事業の計画未達成・不採算などによる撤退、等があります。

事業撤退での時系列の対応例を、その2で述べた時系列の活動事項に従って、以下の通り、平常時の対応と事業撤退が発表された後の対応(初動対応から全面普及まで)について説明します。初めに平常時の対応での具体例を述べます。

「想定外」での平常時での対応のポイントは、①想定外が発生する比率を小さくすること、そして②「想定外」の事態が発生した場合は、その影響を小さくして、平常への復旧期間を短くするための事前準備をすることです。事業撤退での平常時の対応の具体例を、以下の通り述べます。すべての取引先をこの評価の対象とすることは、現実的には不可能です。

そこで、ある基準(代替取引先が少ない、取引金額が多い、技術革新が激しい業界、海外取引先、など)で絞り込んで実施するのが現実的です。さらに、取引先が買収されたり、別の企業と合併したりなど大きな経営変化があった場合は、ただちに対応を開始することが必要です。事前対策での視点の一つ目は、事業撤退リスクの高さの評価です。そして、二つ目は、撤退兆候の探索と、撤退が発表された後に対応を、迅速に抜かりなく行うための準備です。

(1)財務面ならびに非財務面での評価:

① 財務面での評価
複数期分(例:三期分)で、売上高、諸利益、キャシュフロー等の財務指標の推移を評価します。

② 非財務面での評価
(ア)新製品開発方向の妥当性・スピード
(イ)競合の激しさ
* 競合会社の市場シェア上昇
* 革新的競合製品による市場浸食
* 対象取引先の主要顧客への販売状況
(ウ)吸収合併された場合
* 経営体制の変化と新体制の特色
* 親会社の撤退戦略
(エ)企業文化・本社の国籍
(オ)その他

(2)事前対策の実施:

(ア)経営者・幹部とのコミュニケーションによる事業撤退の可能性の探索
(イ)撤退決定後の必要アクション・リストアップ
(2次・3次取引先確認、契約書内容確認、品質問題発生時の対応等)

上記(1)の評価で、撤退リスクが高いと判断された場合は、次のような対応が必要です。冒頭にのべた、事業撤退が想定内の場合の対応となります。

(ウ)代替取引先の選定ならびに価格などの取引条件入手
(エ)代替取引先の部品の仕様などにもとづき当社製品設計変更
(オ)代替取引先と現行取引先への平行発注、もしくは代替取引先への完全移行発注
(3) 事前対応・事後対応の組織化(責任者・情報の一元化)

次回は、取引先が事業撤退を発表した後の、初動対応から全面復旧までの対応例について述べます。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

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