VOS実践方法2

2.バイヤーが受ける接待とは?

一般的な接待は、サプライヤー(受注側)がアレンジして、発注側のサプライヤー選定へ影響力を持つであろうメンバーに対し、酒肴を提供することで、これまで受けてきた恩=発注に対して、感謝の意を示すと共に、将来的な関係の継続、発展を願っていることをサプライヤー、受注側が示す場と位置づけられます。

ドラマでは料亭のようなきらびやかな場所で行われる「接待」が登場しますね。しかし実態としては居酒屋であったり、料理屋であったり千差万別だ。千差万別である理由は、受注側、発注側の取引の規模、出席者の地位にも左右される。酒が進めば舌も滑らかになり、またお互い違う会社ではないという心理的な障害を低める効果も手伝って、ざっくばらんな会話が交わされます。

普段だったら言えない話も、酒の勢いを借りて話題に登場します。そんな会話の中には、招待された発注者側メンバーの人となりが受注側メンバーの巧みな話術によって明らかになると共に、発注側製品の開発動向であったり、人事の話であったり、競合メーカーの動向、発注側からみた受注側の評価なんて内容が盛り込まれます。

受注側からすれば、相手を知るための、営業活動の中心とも言えるような貴重な情報がもたらされるわけです。ここであえて言いたいこと、それは「接待」という媒体によって、幾ばくかのコミュニケーションが成立し、そこで行われる情報交換が普段の仕事にも生かされていたという現実です。これはバイヤー側とて同じはずです。同じ時間、ともすると個室の中で杯が酌み交わされていたわけだから、双方黙っていたわけではない。コミュニケーションの成立ともたらされた情報によるビジネスへの影響は、疑うべく余地もありません。

そして今、事業運営に一定の影響力を持っていた接待費用が、ひところの半分にまで抑制されているのです。接待費は減らされ、接待という媒体によりもたらされていた情報は、いったいどこへ行ったのでしょう。今回の問題提起のポイントはここです。

接待費は減らしたけれど、なんらかの代替え手段を設定しているでしょうか。それとも、これまで同様に接待が行われていて、ただ表に出なくなっただけなのでしょうか。そんなことはないでしょう。コミュニケーションが減って、バイヤーとサプライヤーはお互いの情報をどうやって得ているのでしょうか 。普段のサプライヤーとバイヤーのコミュニケーションも、効率化という御旗を掲げた継続的な人減らしによって、一人当たりの負荷は増大し、サプライヤーとの面談時間すらも減っているはずなのです。

接待費が減少し続けた時代に一体何が起こったでしょうか。それはインターネット、パソコン、携帯電話に象徴されるIT革命と呼ばれている。ビジネスパーソンにいろいろな情報機器が急速に浸透した時代でもあります。今、電車のホームでは携帯電話を操作している人が多いし、新幹線の車内や、空港でパソコンを開いている人が普通の光景になりました。これは接待全盛時代と大きく異なっている点の一つである。しかし、IT革命による情報機器の進化が、従来のコミュニケーションの代替え手段、もっとはっきり言えば、接待の代替え手段となっているでしょうか。

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