3-(6)-2 サプライヤー集約と部品集約

・集約の進め方

やや、ここまで集約自体を否定的なトーンであえて書いてきました。それは、実務の現場を知ってか知らずにか集約を美化する書籍群への違和感もありましたが、それ以上に集約を無批判に推し進める企業のほとんどがバイヤーを疲労困憊させるだけの結果に終わっていることを見てきたからです。私は部品集約の効果をもちろん知っているからこそ、バイヤーに集約の必要性を考えてもらいたいと強く思いました。

集約を進めるときに、最も意識すべきは、「サプライヤー数や部品点数が減ったら、本当に自社にメリットがあるのか」ということです。単純に数量が多い=安い、とは限りません。例えば、部品点数をやっと減らしたとき、そこで初めてサプライヤーに「さあ、いくら安くなりますか」ではダメなのです。笑ってしまいますが、いつしか「部品集約」ということ自体が自己目的化し、「種類を減らしさえすれば良い」と組織や個人は暴走してしまいがちになります。極端な話、部品やサプライヤーを集約しなくても、安く買うことができたり適切な開発ができたりすれば良いわけです。手段と目的を履き違えないようにしましょう。

特に昨今は、生産設備の施術が高度化し、以前では考えられないほど進歩しています。生産品目がいくつあっても、ボタン一つで多様なNC加工が可能だったり、成型やカッティングも可能だったり……。「部品が増えても全然問題ありません」と言い切るサプライヤーもいるくらいです。

それに、自動的に電子発注がなされている現状で、サプライヤー数・部品点数が多少減ったからといって、どれだけ管理工数が減るというのか。一つあたりの発注数が100だったところを、110になったからといって、どれだけコストが安くなるというのか。部品点数を減らすときは、実施以前にサプライヤーと「安くなるのか」「メリットがあるのか」という、しっかりとした打ち合わせが必要です。

 

そして最後に、です。効果を冷静に見積もった後に、いざ集約を開始するか、どうするか。その際、自社の状況をふまえて「現状を本当に変えるべきか」「本当に集約すべきか」と、あえて自問してみましょう。

集約する際は、これまで述べてきた

  • 集約することによって、どのような効果が期待できるか

という観点に加えて、

  • 集約の効果は、集約することによって失う(金銭的・技術的)ものよりも大きいか
  • 集約の先にある姿は、自社の目指す姿と合致しているか

という観点からも考え抜くことが必要です。

これまで、多くのサプライヤー・部品点数集約を目論んだ多くのバイヤー企業が、数年後には集約から逆に拡散に動くことが珍しくありません。それは、集約ばかりが先行して、最終製品として客に魅力ある製品を作るという視点が欠けていたからです。同じものばかり使って製品を作っていては、残念ながら客に新たな価値を感じてもらうことは難しくなります。

それだったら、最新の技術を様々なサプライヤーからどんどん取り入れて、市場に出していった方がマシではないか。と、そういう選択肢があっても良いのです。それだって立派な戦略になります。

実際に、そのような戦略で、集約どころか拡散させることによって自社に技術を広く取り込んでいるところもあります。先端技術の部品を次々購入する。そして、部品ごとに新たなサプライヤーを活用する。これは当然極論ですし、自社製品の技術的・生産期間的な背景からの考慮が必要です。ただ、私が言いたいことは、どこかの企業が集約で成功したからといって模倣するべきではないですし、同じく成功できるわけではないということです。

中途半端な集約は、逆に混乱を生むだけです。自社だけ市場に取り残されることもあり得ます。冷静な効果試算を実施し、将来像を描いた上で、全社的な合意を取り付けてください。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい