集中購買をあらためて考えてみよう 1

最近でも、調達購買業務の効率化を目標とした集中購買に取り組む企業が少なくありません。なにかを「まとめる=集中」させ、購入価格を安くする取り組みです。購入窓口や、1回あたりの購入額を集中させる、集中させ増やして、バイイングパワーの拡大を図ります。

 

集中購買は、新しい取り組みではありません。私が調べた限りでは、1950年代に出版された調達購買本にもコスト削減に効果的な手法として紹介されていました。しかし、旧来から使われてきた手法で、調達購買業務から遠い方であっても理解できるが故に、あやまった使い方をされる場合もあります。あまりにも安易に「集中購買をせよ」といったトップダウンの指示は、十分な集中購買への理解がない中で、安易におこなわれている可能性が高くなります。

 

集中購買を考える際に、まず前提条件として忘れてはならない点、それは調達購買部門なり関連部門が、集中購買の実行を意識して、具体的に「まとめる」行動を起こす点です。集中購買を実践する大前提となる「まとめる」は、自然に行われるものではないのです。これはあたり前の話ですが、安易に集中購買の実践を唱える場合、この「まとめる」際の行動を意識していない場合が多くなります。こうなってしまうにも、理由があります。

 

企業の成長に合わせて、企業規模が拡大していくと、企業内では組織化が実践されます。皆さんが所属する調達購買部門も、社外から事業運営に必要なリソースを確保する機能に専門化しています。これも一つの機能の集中化になります。これまでの事業運営の中で、集中できる部分はすでにおこなわれていると考えるべきなのです。調達購買部門でも、比較的簡単に実行できる「集中化」は既に行われています。例えば、「購買額の80%を、総取引社数の20%を占めるサプライヤーから購入している」といった状態も、20%を占めるサプライヤーに集中して発注しているといえるのです。

 

そのような状況の中で、新たに「集中購買」を唱えるのは、新たに「集中する」対象を設定し、集中を実現させる取り組みをしなければなりません。従来から取り組まれている集中購買ではありますが、実行して効果を得るのは簡単ではないのです。

 

それでは、ここで集中購買とは?について、定義を述べます。

 

「バイヤー企業の要求事項やサプライヤーの提供内容を、さまざまな手法によって共通化・標準化・集中化し、双方のリソース活用の効率性を高めメリットを双方の当事者が享受すること」

 

この定義には、2つの重要なポイントが含まれています。

 

1つ目は、「さまざまな手法によって共通化・標準化・集中化」する点です。「集中する」対象はさまざまであり、対象によって具体的かつ適切な手段を選択し実行しなければなりません。まとめるための手段は、調達購買部門だけでなく関連部門や経営者層を巻き込んで、効果的な手段を用いなければなりません。

 

もう一つ「メリットを双方の当事者が享受」です。発注側が集中購買をおこなう場合、受注者であるサプライヤー側の営業パーソンの心理状態を考えてみます。集中される過程で、自社が集中の枠から外される事態をもっとも憂慮します。したがって、集中から外されないための対応を検討します。このような、発注側からのどう喝的な効果も「手中購買をやるぞ」と明言して起こるわけです。しかし、どう喝だけで具体的な行動を伴わない場合、その効果は限定し、継続性を生みません。いうなれば、サプライヤー側の損益を悪化させ、発注側の損益を良化させるのみです。集中購買の効果を長期的にかつ、実効性を持たせるためには、集中してサプライヤー側にもメリットの享受が必要です。集中購買の実現には、集中する=まとめる過程において、サプライヤー側でもさまざまな具体的な対応が必要となってきます。これまでと異なる新たな対応を要する場合もありますので、サプライヤー側のモチベーションを確保するためにも、サプライヤー側にもなんらかのメリットの享受してもらう必要があるのです。

 

ここで、具体的な集中購買の3つの形について述べます。

 

1.購買権限の集中

2.購買品の集中

3.サプライヤーの集中

 

実務で集中購買に取り組まれたご経験をお持ちの方も多いと思います。集中購買とは、購買のあらゆる局面での適応が可能な、非常に汎用的なソリューションです。しかし、どんな集中購買であっても、次の2つのアクションを起こさなければなりません。

 

・具体的にまとめる「対象」を選定

・「対象」を「集中=まとめる」手段を選択し実行

 

しなければなりません。この3つの形では、図の上に表示される購買権限の集中では、より全社的かつ、上位者の意志決定と決定を実行する覚悟が重要となってきます。一番下のサプライヤーの集中では、他の二つの形と比較して調達購買部門の役割が大きくなってきます。

 

次回から、3つの形の詳細と具体的な事例にもとづいて問題点を確認しながら、より実効性のある集中購買の姿を模索します。

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