仕事は8時間せず、2時間を目指す「名刺から電話番号が消える日」1(調達・購買とは何をするのか)
「売上規模10億円の企業」というとき、その構成員が100人なのか10人なのかで全く評価が変わってきます。単に売上規模だけを競り合う時代から、効率性を問う時代にあっては、各バイヤーにおいても自分の仕事を「いかに短い時間で、より多くの成果を上げることができるか」意識せざるを得ません。それは資本をいかに効果的に使い利益を生み出せるかを株主から求められる時代にいる我々バイヤーの必然なのです。
電話はこれまで主要な伝達手段であり続けました。まず私が調達・購買部門に配属されたとき、皆が一斉にサプライヤーと話して騒がしい様子が印象に残っています。考えてみるに、一回の会話を10分間として、多い人は一日に20回ほど電話を受発信しますから、200分=約3時間半を電話に費やしている計算です。8時間を勤務時間とすれば、これはあまりに多い占有割合と言って良いでしょう。
電話はいつでもかけることができる、という意味において発信側のメディアでした。これは同時に、受信者が受信する時間を選択できないため、時間拘束のメディアとも言うことができます。
これを古いメディアと定義したときに、新しいメディアが台頭してきていることはご承知の通りでしょう。それはeメール等の電子通信です。eメールは、いつでも受けることができる、という意味において受信側のメディアと言えます。もちろん、常に遅い受信と返信はご法度ですが、それでも受信側の自由度はかなり上がりました。これは、自分のどの時間を使用し受信するかを可変できるという、時間選択のメディアなのです。
受信側が時間を選択できるということは、仕事のスケジュールを自分で決めることができるということに他なりません。これまで発信者側に振り回されていた仕事時間。その主導権を自分に引き寄せるということです。
物理的な意味で、組織内にずっと留まって仕事をしているのであれば電話でも良いかもしれません。しかし、仕事はどんどんグローバル化しているため、受発信者は世界のどこにいるかも分からない。地理的な多様性はどんどん広がっていくでしょう。この流れにも、eメール等の電子通信は最適な伝達手段と言うことができます。
電子上で記録されたくない内容があるときや、初めて誰かと出会うときや、泣きながら切実な状況を相手に訴えたい場合は対面することも有効でしょう。そこまで私は否定しません。しかし、ずっと取引をしていて、特に問題も話すべき議題もないのに何かにつけてバイヤーと会いたがる営業マンは評価されるどころか、「相手の時間を考えることができない失礼な人」とみなされることになるでしょう。ほとんどの用事はeメールだけで済ませることができるはずであり、まさに「名刺から電話番号が消える日」が近づいているのです。