これまでの常識①-1・・・経験を重視しすぎる「経験だけが本当に必要か?」(調達・購買とは何をするのか)

「若造が何を言っているんだ!!」

入社間もないときに、違和感を抱きました。私は、「自分が正しいと思ったことをどんどん発言しなさい」と入社時に教えられたことがまさか建前だとは思いませんでしたので、活発に会議では発言するようにしていたのです。しかし、どうも私の発言が歓迎されているような雰囲気ではありませんでした。「なんでも発言せよ」と言われたから実行しているだけなのに、受け入れられない。違和感とは、どうやらこういう現実から発したものでした。

例えば、納期調整の業務に話が及んだとき。「そんなのプログラムを組んで、処理すればアシスタント女性の仕事なんて半分に減らせますよ」で終わらせれば良かったのでしょうが、「こういうことをなぜ先輩方はやろうとしなかったんでしょうか」などと皮肉を付け加えてしまう私の性格もあったのでしょう。「お前が、そんなことを言う必要はない」と、まるで「新人のくせに何をイチャモンつける気か」という拒否感に満ちていました。

調達部門内での、ある会議でのことです。

発言者は、定年間近のバイヤーでした。「今ね、若手に足らないのは、現場を見に行くことだと思うんだよ」と、おそらく紀元前から繰り返されたであろう、若手への説教のワンフレーズです。「俺の若いころは、生産現場に張り付いて、生産を手伝ったりしたものだ」という、苦労話に見せかけた自慢が繰り返されました。私は、齢60近い人の思い出話に付き合わないほど非礼ではありませんので、その話をずっと聞いていたのですが、いよいよ限界です。私は意を決し、「もう昔話は止めましょうよ。面白くないですし、若いバイヤーの方が平均的にはずっと優秀ですよ」と申し上げました。すると、その老年者は烈火のように怒り出し、「現場を知らない奴が何を言うんだよっ!」「若造なら、話を聞いておけばいいんだっ!」と止まりませんでした。人が自慢話をしているときは、止めるのではなく、その間に違うことを考えておけば時間を無駄にせずに済む、という教訓を得ることができた私ですが、そのときは長時間にわたって叱責を受けたことを覚えています。

その後も、社内や社外でも、同じような発言を耳にしました。「経験がまだ浅いな、キミは」とか「この仕事は、20年くらい経験を積んでからだ」とか。「キミじゃなくて、もっと上位者と話がしたいんだ」とも。どうも、この調達・購買という世界は、属人的な仕事のやり方を、むしろ尊ぶ傾向があることに気づきました。経験を積まなければ、上の仕事はできない。知識を伝播する書類も体系も整備されていないので、どんどん一極集中的に特定の人にのみ、ノウハウが累積していく。経験豊かな人にしか、周りがそもそも信頼を置いていない。属人的な業務であれば、当然ながら経験を積んだ人に注目が集まらざるを得ないでしょう。

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