CSR調達の実践 7

現在おこなわれているCSR調達監査は、次の3つに分類されます。

 

1.第1者監査

 

企業内部での監査が該当します。内部監査によって自社以外からの監査に備えたり、自己宣言の根拠にしたりします。第1者監査のメリットは、監査する側もされる側も同じ価値観にたって、同じ言葉を使っている環境の有効活用です。実際の業務や、直面している課題にも双方が精通しているので、監査作業自体は円滑に進むでしょう。メリットのマイナス側面には「指摘への2つの躊躇(ちゅうちょ)が該当します。

 

1つめは、上位者からの圧力です。なにか問題が見つかっても、新たな行動による手間やコストを監査側が危惧(きぐ)し、指摘をためらう状況です。2つめは、監査する側、される側双方の「認識の甘さ」によって、問題があっても指摘がおこなわれないケースです。

 

内部監査は、CSR調達でなくISOや他の規格の認証を取得していればご経験をお持ちの方も多いでしょう。多くの企業ですでに取得実績のあるISO9000シリーズの場合は、規格内容の理解が全社員に進んでいます。したがって内部監査でも社員の持つ知識量は多く、かつ必要性を社員の多くが理解しているため、こういった圧力は比較的発生しづらい状況です。しかしCSR調達では、そもそも「CSR調達ってなに?人権?」といった反応が予期されます。内部監査は、バイヤ企業がサプライヤーを監査するためにも必要なプロセスです。取り組みの当初は、問題点が多くてあたりまえとの前提で取り組むのと同時に、必要性に関する社内啓蒙(けいもう)活動もおこないます。

 

2.第2者監査

 

これは、バイヤ企業がサプライヤーに対しておこなう監査が該当します。この監査の結果によって、購入の可否を決定します。この監査にもメリット・デメリットが存在します。

 

メリットは、第1者監査と同じく、バイヤ企業はある程度、サプライヤーの実務内容や抱えている課題を理解しています。また同業他社との比較も可能です。CSR調達は他のCSR実現の取り組みと同じように、他社の成功事例を模倣して自社の活動をおこなうケースがあります。この場合、バイヤ企業が媒体となって、他社の成功事例に関する情報提供も可能です。理想的な第2者監査とは、バイヤ企業とサプライヤーの双方が自発的かつ積極的に監査対応をおこなって、改善活動を推進します。

 

一方、デメリットです。第1者監査と同じように「指摘への2つの躊躇(ちゅうちょ)」が存在します。1つめは第1者監査と同じく「認識の甘さ」によって起こります。CSR調達では、現時点でグローバル統一された規格が存在しません。現在は業界で統一した規格化の途上です。したがって、正しい認識レベルの確認が大きな課題となります。認識の甘さを払拭(ふっしょく)するために、ただ厳格な監査をおこなって、やまほども指摘をするのでなく、バイヤ企業とサプライヤーが共同して解決策を模索します。監査は正しい姿へ自社を修正・改善していくための取り組みです。監査の先にあるゴールを共有して、認識の甘さで生じる問題を回避します。

 

2つめは、指摘内容の是正にともなって発生するコストの問題です。人権に配慮した労働条件の改善にコストが発生するケースは容易に想定できます。この問題は、かつてISO9000シリーズでも発生しました。最低限のコストへの反映はやむを得ません。しかし、なにもかもコストで解決するのでなく、企業の創意工夫と、バイヤ企業とサプライヤーの協業によって乗り越えます。共同して検討し、解決策を見いだす関係こそが、CSR調達実現の近道でもあるのです。

 

3.第3者監査

 

これは、独立したまさに第三者がおこなう監査です。独立監査機関は、日本でも外資系の監査会社がソリューションを提供していますし、NGOがこういった監査実行活動をみずからの資金源にしているケースもあります。ある監査会社の担当者に聞いたところでは、日本企業が国内で第3者監査を受けている事例はまだありません。第3者監査の結果を自社のホームページで公開しているケースも、一部のアパレルや流通の大手企業に限定されます。まだ多くの日本企業には、少し縁遠い話です。将来必要になったときの準備として、先の2つと同じようにメリット・デメリットを明記します。

 

まずメリットとしては、専門家へ委託するので、客観性が担保されます。加えてCSRに関する専門家に依頼するので、専門家の持つ知見を活用できるメリットがあります。一方では、監査を受ける企業の実態を理解するのに時間が必要である、またノウハウを有する監査員の絶対数が少ないといった問題もあります。まだ日本企業では、具体的なアクションの中に第3者監査を想定するのは極少数の企業です。ニーズが高まれば、当然供給可能なサプライヤーも多数登場します。今は、状況を注意深く見守っておきます。

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