緊急事態宣言の解除と「残念な」調達
緊急事態宣言が解除されたあと、どのように調達業務が変化するか調査しています。いまのところ、積極的に新規取引先を開拓しようとする動きは見られません。そもそも対面の会議を避けています。テレビ会議も、既存の取引先が中心です。そこで、私は「これからの調達業務様式」として先日、オンライン講演会で発表しました。
メインの動きは次のようなものです。
1.バーチャルマーケットの流行
VRグラスで、仮想の空間を作り、そこで見本市を実施しようという試みが拡大しています。先日のバーチャルマーケットには100万人弱の参加者がいました。新型コロナウィルスの第二波や第三波が懸念されるなか、私たちは真剣に仮想空間での工場見学や見本市への参加を検討せねばなりません。
2.新型コロナウィルス版BCPの設定
電気自動車で有名なTESLAは、新型コロナウィルスを防止する対策立案をサプライヤに要求し始めました。かつて東日本大震災の際に事業継続計画が注目されました。もはや感染症の対策有無が、サプライヤ選定基準になろうとしています。
3.購買単位の変化
現在、モジュール化を進めようとする企業が増えています。イチから生産するのではなく、モジュールをアッセンブリすることで、感染リスクを減らそうとする取り組みです。かつてはモジュール化は設計効率から語られましたが、現在ではリスクマネジメントの観点から推奨されるようになりました。
4.世界分散の動き
中国にくらべて、むしろメキシコの生産遅延が深刻です。グローバル化する世界においては、脱中国ではなく、むしろ世界各国に生産や調達先を分散することが重要です。決して答えは日本国内回帰ではありません。それはきっと歴史が証明するでしょう。
5.無人化やAI化の動き
これまで建前や流行語にすぎなかった、倉庫の無人化や、調達業務のAI化を真剣に進めていくタイミングです。そして省人化を図り、本体はインテリジェンス化が必要です。つまり、人間と人間の接触をできるだけ避け、機械に代替するべきです。新型コロナウィルスは悪しき事象ですが、この機械化は歓迎すべきトレンドなのでしょう。
そして、最悪なのは、この新型コロナウィルスをきっかけとせずに、ダラダラと旧来の業務を続けること。それこそが、「残念な調達業務」にほかなりません。
これからも、新たな調達様式を提言していきます。(坂口孝則)