【ご提案があります】令和時代の調達戦略

数年前のアンケートで、私にとって衝撃的なものがありました。文部科学省科研費プロジェクトの「自動車サプライヤーシステムに関するアンケート調査」です。何に驚いたかといえば、サプライヤ企業のほとんどが、買い手であるバイヤー企業からの支援は、ほとんど役に立っていないと答えていたからです。私やこの文章の読み手である、調達・購買部員が、サプライヤへ日ごろ指導している内容は、無意味ということになります。

しかし、これは理解できます。というのも、多くの調達・購買部門は、サプライヤにたいして「一緒になって現場改善を進めましょう」というものの、実際は、単に「生産性あげてください」「コスト削減してください」と依頼するだけ。サプライヤの現場に行っても、自分でなにか考えるわけでもなく、調達・購買部員は単に眺めているだけ。けっきょくはサプライヤへ丸投げするだけ。こういう状況だから、バイヤー企業からの支援は役に立たないといわれるのです。

先人たちの研究によれば、日系企業は、他国にくらべて、生産コストのうち調達費や外注費が高いとされています。他国は内製比率が高いのに、簡単にいえば、日系企業は他者にどんどん任せてきたのです。これは意図した構造ではありませんでした。高度成長期に、あまりに急速な需要の高まりに応じるために、外部の力を借りなければならなかったからです。

思うにこの日本の特殊性が活かされていません。

ではどうするか。ここからは私のアイディアを語ります。文章は世界を変えるので、こう書いておけば誰かがご協力いただけると信じています。繰り返しますと、日系企業はサプライヤとの連携が特徴です。これは、昔から「すりあわせ技術」などといわれてきました。しかし、外部企業と絶え間なく触れ合い、そして、貴重なデータを入手できるはずの、調達・購買部員がそれを活用するにいたっていない。

私のアイディアというのは、まず100万円くらい調達部門で予算を確保します。それで、生産設備からクラウドに情報をアップできる機器を自作します。100万円で数十台ほど作成します。展示会などで紹介されている何千万円のIot機器は現実的ではありません。それなら、秋葉原のパーツ屋で自作できるような簡易的なものでじゅうぶんです。それで、クラウドもアマゾンとかグーグルが提供しているサーバーにしましょう。

それで、テストケースとして協力してもらえるサプライヤを数社あつめます。そこで、生産設備に装着してもらい、ワンショットあたりの秒数とかをひたすら記録しつづけます。これも、あるていどの適当さでじゅうぶんです。たとえば、生産設備と完全連携する機器はお金がかかりすぎます。しかし、たとえば、生産設備が稼働しているときと、していないとき、LEDの色が異なれば、それでセンサーは情報を拾えます。

私はLEDの色から情報を拾うことを推奨していません。そうではなく、これだけIotなど、先端技術の実装が安価でできるのだから、調達・購買部員が率先して、サプライヤ工場の見える化を実践したほうがいいのではないか、という提案です。私が思うに、バイヤー企業が「指導」と称するものは、現状把握が絶対的に欠如しています。むしろ、現状把握さえすれば、勝手に解決策は浮かぶのではないでしょうか。

たとえば、サプライヤの工場で設備が停止しているのはなぜか、生産サイクルタイムが遅いタイミングはなぜか、ある作業者だとなぜ生産が遅くなっているのか、金型段取りが悪化する理由とは……などなど。さまざまな現状が把握できるはずです。これらが、何千万円ではなく、安価に実現できる時代です。工作を自作できなかったら、こんなの作りたいと、それこそ中国かどこかの工場に訊いてみればすぐさま実現します。

そして、私が考えるのは、その先にあります。サプライヤとの連携を、改善活動につなげる。そして、そのサプライヤとの改善活動のノウハウそのものを、パッケージ化することです。これまでのようなサプライヤへ依頼を繰り返すのではなく、センサー類などを活用した具体的な改善手法を「型」として備蓄。そうすれば、海外拠点を支援できるでしょう。さらには、調達・購買部門が、コンサルティングを外販するようになるかもしれません。

こういう話をすると、「他社で実績はあるのか」と訊かれます。時代は令和ですよ。他がやっていないことを先駆けてやるから価値になるんですよね。また、じっくり時間をかけて、という方もいるでしょう。しかし、新聞を読んでくださいよ。いまは、なんでもやってみて試行錯誤するなかで、新たなビジネスが生まれているんですよね。失敗こそが最大の参入障壁です。

サプライヤと自社のつながりにこそ注目すること。いや、これはけっして冗談ではなく、日本の特殊事情を強みに変える起死回生策だと私は思っています。

誰か協力してくれないかな、とあえて書いておきます。

(今回の文章は坂口孝則が担当しました)

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