ドラッカーと調達・購買業務のトクする話

以前、気鋭の経営学者が話していたのを聞きました。「いま先端の経営学者はドラッカーなんて参照していない」と。ドラッカーとは、ご存知の通り、コンサルタントならびに経営学者として有名です。日本では「もしドラ」でふたたび脚光をあびました。しかし、その気鋭の経済学者いわく、もう時代遅れだと。

私は逆に興味をもちました。というのも、普遍的な内容がドラッカーの著作に書かれているとすれば、古いも新しいもあるはずはありません。私は生き残っている古典にはすべてが書かれているという立場です。そこで、ドラッカーを再読することにしました。はじめて読んだのは、たぶん20年くらい前。新入社員だったころです。

そこで、まず、名著といわれるドラッカー「経営者の条件」を再読しました。すると、以前は、まったく驚きもしなかった箇所が、驚きをもって私の前に現れました。だからこれを読んでいる20代の方々は、その面白さに気づかないかもしれません。「経営者の条件」でドラッカーは、「知識やスキルや習慣をいかに身につけたとしても、まず初めに成果をあげるための能力を向上させておかなければ何の役にも立たない」そして「能力は習得できる」と書いています。

若いころは、ここにひっかかりませんでした。しかし考えれば、通常、能力と呼ばれるものは、知識やスキルそのものだと思われているんじゃないでしょうか。ドラッカーは、それは別物だと語っています。なんということでしょう! 実際に、この「経営者の条件」を読んでいただくと、では、能力とは何かが丁寧に説明されています。丁寧というより、まどろっこしさを覚えるほどです。

長々と書かれている内容を、私が手短に説明します。異論があるかもしれませんが、能力イコール鍛錬、ということです。対象を間違って、そこに知識をつけたり、スキルをつけたりしても意味がありません。重要なのは、成果をあげることであり、そのためのステップを考えることであり、それに真摯に、徹底的に取り組むということです。これを修練といってもいいでしょうし、鍛錬といってもいいはずです。地頭とは違います。だからドラッカーは「能力は習得できる」と書いているのです。

重要なのは、手軽な解決策に飛びつかないこと。

振り返れば、私たちは、調達・購買業務でも、単純でわかりやすい正解ばかりを求めているのではないでしょうか。コスト削減やその他の成果に魔法の杖はないのに、奇跡ばかりを求めています。ドラッカーは、自分自身をマネジメントできない人間が組織をマネジメントできるはずがない、ともいっています。なるほど、調達・購買業務に照らせば、自分自身をマネジメントできない人間がサプライヤをマネジメントできるはずがない、といえるかもしれません。

身も蓋もない話をします。能力、鍛錬、修練、といった、ほんとうに重要なことが、なぜ叫ばれないかがわかります。つまらないからです。凡庸だからです。しかし、凡庸のなかにこそ、ほんとうに成果を上げる真実が隠されているに違いありません。調達・購買業務のなかでコスト削減なら、時間を管理し、何をすればもっとも成果があがるかを考えたり、交渉に使える自社の強みを考えたりすること。そして優先順位を決め、どの手段が効果的かを意思決定すること。定期的に見直して、よりよい姿を目指すこと。市況を分析したり、そのなかでの生き残り策を練ること。

ああ、平凡だ。しかし、この、つまらない行為の積み重ねが強い調達・購買を形作るのは間違いありません。

なお、ドラッカーは仕事のやり方を考えるために、一人っきりの、まとまった時間が必要だといっています。メールやら電話やら、いまでは取引先からLINEでも届く連絡に忙殺されている状況は、その真反対といえるでしょう。現代では、もはやスマホを手放すのが出家で、電波を断つことが修行といえる時代に入っています。それが、能力構築、鍛錬、修練につながるとすれば、ドラッカーは卓見を述べていたに違いありません。

(今回の文章は坂口孝則が担当しました)

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