サプライヤの検査偽装に我々はなにをすべきか
自動車メーカーの最終出荷検査、そして、某社のアルミニウムや銅製品などの検査データ改ざんが発覚しました。固有名詞の企業をあげて問題点を指摘するのではなく、過去の事例から教訓を述べておきます。
遡ること、だいぶ前。エレベーターで材料が変えられ、大問題になった案件がありました。内容は、こういうことです。
・鋼板SS400を本来は使うべきだった
・しかし強度レベルの低いSPHC材が使われていた
・調べていくと、サプライヤはこの調達・購買担当者にたいして、SS400をSPHCに変更すると説明していた
・調達・購買担当者は、サプライヤが大丈夫というなら、と承認していた
・調達・購買担当者は、あまりにも多忙で、かつ材料変更はよくある話だったため、そのことを報告していなかった
その後に、強度不足が問題となりました。建築基準法からすると、SPHC材では基準値以下だからです。ここでサプライヤとともに、調達・購買担当者も世間から猛烈な批判を浴びました。
ただ、ここであえて調達・購買担当者の肩を持ってみたいと思います。怒られるかもしれません。しかし、あえて申しておきます。この調達・購買担当者が、真面目に、SS400とSPHCを比較検討したらどうでしょうか? ためしに、化学成分表を見てみてください。「え! これ同じではないか」と思うほど酷似しています。
そこまで確認して、あらためて、調達・購買担当者を責めるのは酷ではないかと私は思います。と、同時に、では手放しでサプライヤと調達・購買担当者を赦せるかというと、それも違うでしょう。必要なのは、きっと、「悲観主義2.0」とでもいうべき態度なのだと思います。
「悲観主義2.0」とは何か。それは、長期的には楽観的に考え、短期的には相当に悲観的に考える態度です。長期と短期、逆ではありません。基本的にはサプライヤがいっていることは正しいだろう、しかし、目の前については、あえて執拗に調べる試み。たとえば、SS400とSPHCを比較検討したら、たしかに微妙に異なります。その微妙さを逃さない執拗さ。その差異がほんとうに大丈夫かと調べる執拗さ。
サプライヤから試験結果をもらいます。そのすべてを疑うことはできません。総じて日本サプライヤは優秀ですから、それを疑う必要もありません。でも、短期的には悲観的に、日々の調達のなかから抜き取り検査でもいいので、実物試験を行う悲観さが必要ではないでしょうか。それが「悲観主義2.0」です。
長い関係性から、サプライヤのことは信じる。でも、目先は疑う(「悲観主義2.0」)。これが、調達・購買の態度だと思うのです。
(今回の文章は坂口孝則が担当しました)