調達は○○にはじまり、○○に終わる
調達は、何にはじまり、何に終わるのか。これは、端的にいえば、「関係者からの感謝」だと私は思います。設計・開発部門から、感謝されているか。サプライヤから感謝されているか。これさえ押さえておけば、調達の仕事は向上すると思うのです。よく調達の仕事はQCDの確保だとよくいいます。でも、ここで、「関係者からの感謝」を得ることと定義しなおしてみたらどうでしょうか。調達部門が、社内外のサービス部門として生まれ変わるのです。
しかし、それにしても、調達関係には「つまらない」ひとがあふれています。そもそも関係者のことなんて考えていない。くだらない覇権争いや、社内政治のことばかりを気にしています。なぜもっと俯瞰した視点から部門運営ができないのでしょうか。調達が「みんなからの感謝を集める」部門だと定義したときに、きっと何かが変わります。
くわえて、なぜ会社求人のバイヤーの「応募資格」は、かくもつまらないのでしょうか。「交渉力のある人」「図面の読める人」「コミュニケーション能力のある人」「ストレス耐性のある人」ていどです。せいぜい「新たなことに挑戦できる人」などでしょう。なぜ、「すごい人材モトム!」くらい書けないのでしょうか? これではトガッた、生意気なひとなど集まりません。
たとえば、「しびれる調達ができる人」くらい書けないのでしょうか?「セクシーでドキドキさせる仕事ができる、破天荒なインパクトをもたらす人募集!」くらい書けないのでしょうか? 調達・購買部門で働いていることが「超高層ビルのきれいなオフィスで働いているファンドマネージャー」よりもカッコよくなってはいけない理由はない。そして、まさに「株式会社金型板金鋳造製作所」で働いているバイヤーが、最高にカッコいい職業に変更されなければなりません。
いや、冗談ではないのです。調達・購買部門が変わらねばならないのであれば、高いイメージ戦略こそが必要なのです。
調達を統括する「偉い」方々からは様々な施策が聞かれます。「創意工夫で、調達業務を変えよう!」、「これまでの知識の蓄積をもとに、調達の情報を発信しよう!」とかね。ただ、掛け声はよいのですが、残念ながら、こう声高に叫ぶ人自身に創意工夫やオリジナリティが感じられません。おそらく、叫んでいる本人が会社と組織と慣例にがんじがらめにされているからでしょう。
こういう人は、求人に「すごい人材モトム! しびれる調達ができる人! セクシーでドキドキさせる仕事ができる、破天荒なインパクトをもたらす人募集!」と書くことは思いつかないし、書くこともできないでしょう。「超高層ビルのきれいなオフィスで働いているファンドマネージャー」よりも購買部をカッコよくしなければいけない、ということすら思いつきません。
しかし、このあいだ、ぶっとんだ話を聞きました。「調達人材の優秀さを計測する手段を思いついた」と某有名企業のマネージャーから聞きました。有名かつ、優良企業のマネージャーからです。それは「他社からヘッドハンティングされた回数で計測する」とおっしゃるのです。まじかよ、と私は思いました。「関係者からの感謝」をたくさん集めている調達・購買担当者であれば、たしかに、いつの間にか社外にその名声が届き、ヘッドハンターから声がかかるでしょう。「関係者からの感謝」を集めるために、目の前の仕事に挑戦を続けている調達・購買担当者は、いつでも求められています。
それにしても、「他社からヘッドハンティングされた回数で計測する」とは過激な……。もちろん、ほんとうに部下が転職することは望んでいないのせよ、ドキドキさせる評価軸です。
「関係者からの感謝」を集め、そのために調達部門の意味付けを変え、業務をセクシーにすること。「そんなの無理だよ」というあなたには、たしかに無理かもしれませんね。(坂口孝則)