これから日本の調達部門は何で食っていくのか

世界の国々をめぐったり、あるいは日本で世界の方々と話していると、日本の優位性は、二つのように感じます。それは「素材」と「人材のしつこさ」です。

どういうことかというと、やはり東レさんでも村田製作所さんでもよいのですが、素材開発、材料開発の分野でやはり日本企業の右に出るところはないように思います。私なりに申せば、あれは経営者が利益を無視した暴挙ともいうべき投資を続けたからです。数十年も、利益が出るかも、いやいや、開発できるかもわからない対象物に投資しつづけることは、きわめて難しいことです。失礼ながら「暴挙」と書きましたが、もっといえばこういうことは投資リターンと回収期間を重視する企業ならできません。

ある種、日本企業が無謀だったから(褒め言葉です、念のため)、現在の優位性があるのです。そして素材開発ができない中国は、原料そのものを確保しようとした、と考えるとわかりやすいですね。だからレアメタルなど、いっせいに利権を含め囲い込みました。アフリカへの資源外交も、そう理解できます。

「人材のしつこさ」というのは、一人ひとりの社員が、しつこくしつこく改善作業に没頭できる、という点です。もちろん、これには常に効率性がつきまといます。そんなに時間をかけて改善しなくても、もっと新しいビジネスに移行したほうが利益が稼げる、といった側面もあるでしょう。ただ、やはり、この「人材のしつこさ」は強調しておきたいのです。

日本国内は、生産も縮小する、国内消費も減少する、といった状況です。私たちが何で食っていくかというと、「頭を使った業務」しか残りません。知恵を使って振り絞った、業務のノウハウしか世界に打って出る術はありません。だから、「しつこさ」を各種のスキルに昇華するしかないのだろう、と私は思います。

具体的には、たとえば社内ノウハウのマニュアル化はどうでしょうか。本社が、海外拠点の社員たちに、どれくらい日本で培ったノウハウを教えているでしょうか。おそらく皆無ではないでしょうか。それらを完全公開し、そして、さらにそれを超越するノウハウを開発する。たとえば、海外拠点の方々に、相見積り以外のコスト削減手法を体系立てて教える機会はあるでしょうか。私はそれらが、日本の調達に付加価値を付ける手法だと思うのです。

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