ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●6-2サプライヤを知るための情報収集方法

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調達購買部門は、サプライヤの最新状態を理解しなければなりません。また、新しいサプライヤの開拓では、サプライヤの基本的な企業情報を入手しなければなりません。サプライヤとの関係によって入手すべき情報は、その質も量も異なります。調達購買部門/バイヤにとってありがちな状況を想定し、必要な情報を学びます

(1)取引を始める際に入手する情報(資料)

次の資料は、サプライヤから購入を開始する際に入手します。内容の更新があった場合も、新しい情報を入手して、常に最新情報の手元に置きます。特に④財務諸表は、サプライヤの決算の後には必ず入手します。定期的にすべてのサプライヤへ情報提供を要請、情報入手する仕組みを作って、入手漏れを無くします。情報入手のポイントは、サプライヤとの取引条件に、情報提供を盛りこんで、できるだけ情報収集に手間をかけない仕組みを作る点です。

①会社案内

これは、インターネットのホームページに掲載している内容、あるいは紙媒体の会社案内です。会社案内とは、顧客やサプライヤといった取引先に自社を紹介する資料です。基本的情報の中でも基本の部分になります。

大手企業であれば、紙媒体による会社案内も作成し、更新頻度も高く、入手した会社案内に利用価値があります。しかし、中小企業によっては、数年に1度の更新しかおこなっていない場合もあります。そういった場合は、サプライヤの最新状況をヒアリングによって補います。

また、最近では中小企業でもインターネットのホームページを積極的に活用している場合もあります。このようなサービス( http://webchecker.biz/ )を活用すれば、ホームページの更新を一定間隔で確認し、更新をメールで知らせてくれます。できるだけ情報収集に発生する手間を抑制します。

②製品カタログ

これは、購入対象品によって提出要否を判断します。これも、上記①と同じように、インターネットのホームページで代用する場合もあります。この資料は、ネットなのか紙媒体なのか、欲しいタイミングで確実に入手できる方法の確認です。

③登記簿謄本

この資料の提出は、所在の確認が目的です。上記①で確認した情報との整合を確認します。代表者の印鑑証明の提出を求めるケースもあります。これは、法人としての信用を印鑑証明書の提出によって確認するとの意味あいが高くなっています。

④財務諸表(決算書)

法人であれば、毎年必ず1度は作成しますので、最新版を入手します。

⑤取得している認証の認定証コピー

取引を開始するにあたって、品質や環境のマネジメントシステムの認証が条件となっている場合があります。その場合は、コピーを入手します。入手したら、認証を更新しているかどうかを確認します。

この5つの情報は、必要性の程度でなく、法人として最低限の「自己紹介資料」として提出を求めます。

(2)バイヤ企業側のフォームに記入して、提出してもらう情報

次の資料は、バイヤ企業側でサプライヤを管理するための基本的な情報になります。

①サプライヤ調査票

これは、上記(1)で確認した情報を、バイヤ企業のフォームに一覧化するものです。中には、一般には公開できない情報が含まれている場合もあります。新たなサプライヤから購入を始める際には、バイヤ企業から提出を要求します。また、バイヤ企業に提出したサプライヤ調査表の記載内容が更新された場合は、変更した内容を提出してもらいます。

②コミュニケーションチャンネル一覧表

これは、サプライヤの組織の理解が目的です。組織全般を一覧表で回答させる場合、また特定の部門、例えば品質保証の責任者のみを提示させる場合があります。自社のとって重要なサプライヤであれば、前者であるべきだし、重要度合によっては、キーポイントのみの確認で済ませます。

③支払に必要な情報(銀行、口座種別と口座番号)

購入対価の支払いに必要なデータです。サプライヤの請求書に記載している場合もありますが、サプライヤから継続的に購入する場合は、あらかじめ支払先を登録した方が、効率的な業務処理が可能です。

☆購入状態に関する情報の入手

サプライヤに発注した購入品が、要求条件通り納入されたかどうか。次の2つの情報を社内から入手します。

(1)不良発生率
納入件数に対して、どの程度の不良を発生させているかを表すデータです。サプライヤの品質が継続的に確保されているかどうかを確認します。時系列にデータ展開し、変化の兆候を見極め、必要であれば対策を講じます。

(2)納期遵守率
契約納期がどの程度遵守されているか、どれくらい納期遅延が発生しているかを掌握するためのデータです。サプライヤの事業が適正に運営されていれば、品質や納期は守られます。納入遵守率に時系列で変化が生じれば、バイヤから状況を確認するといったアクションに繋げます。

☆キーマンの掌握

(2)②のコミュニケーションチャンネル一覧表は、サプライヤの組織と、役割分担がどのように行なわれているかを理解するために必要です。この資料をベースに、日々のやり取りからサプライヤ内のキーマン=意志決定に影響力を持っている人を見極めます。サプライヤから提示された資料だけでなく、バイヤの日常的なサプライヤとのコミュニケーションによってキーマンを見極めます。このキーマンの特定化と意志を持ったアプローチがサプライヤマネジメントの基本になります。将来的にバイヤ企業に有利に、戦略的にサプライヤを攻略する際のポイントをバイヤとして掌握するのです。

(つづく)

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