サービス産業優位を疑え!(坂口孝則)

モノづくりの次はサービス産業だという。日本人のきめこまやかなサービス、心づかい、おもてなしこそ、日本が輸出すべきものだそうだ。たしかに、製造業はダメだと考えるひとたちも、日本人のサービスレベルは高いと疑わない。

しかし、ほんとうにそうだろうか。ではなぜサービス業各社の海外進出は進んでいないのか。カイゼンのトヨタウェイは有名でも、日本流サービスが外国人に認知されているかというと心もとない。むしろ、米ザッポスがよほど有名ではないか。

日本で本屋にいって、探している本を尋ねると、「端末でお調べいただけます」だと。端末で調べて、棚にあるはずの本がないことを告げると「棚にないものは在庫切れです」のお答え。これをすべての本屋チェーンで経験した。それにくらべ、アマゾンの機械的なオペレーションは実に気持ちが良い。

自宅に荷物の不在通知が届くと、荷物番号から郵便番号、電話番号……等々、各種の情報を入力する必要がある。あの長い荷物番号にはなんの情報が詰まっているのか不思議だ。

先日、auに行き新規加入の手続きをすると、1時間半もかかったのちに、月額315円の「安心ケータイサポート」を勧められた。嫌だ、と断ったら、「ではいったん加入なさったことにして、退会手続きとさせてください」という。勧める、のではなかったか、と訊きかえすと、「このようなことになっています」。おなじく、月額390円でアプリやポイントサービス、オンラインストレージを利用できる「auスマートパス」への加入を勧められ、それも嫌だ、と断ったら「すぐに止めてもよいですから加入なさってください」と。解約を忘れてお金が引き落とされるだけでは。「そういうこともあるかもしれません」。

EMOBILEのポケットwifiが半年で故障し、バッテリーもほとんどもたなくなった。故障安心サービスに加入しているのでその旨を伝えると、「範囲外」ですと。しかたないので故障品を引き取ってくれとお願いすると、SIMカードに載っている「チップ番号」を教えてくれという。なぜ引取りにそのような番号が必要か確認したところ、「不要でした」とおっしゃった。ちなみにバッテリー費用は3990円。

これまで複数の銀行で口座をつくってきた。法人口座の登記名変更の必要書類を訊くと、予想どおり「ちょっとお待ちください」のあと「お電話代わりました」の声。それで? 「ご用件を教えていただけますか?」。さっき伝えました。「ですから、もう一度」。やだ。「残念ですが、それではお答えできません」。ほんとうに残念だ。

これまで何人のひとたちが、二度手間、三度手間に時間を浪費してきたことだろう。これらは日本人が海外に自慢できるサービス業の「おもてなし」なのか。

この前、知人たちと日本人の「おもてなし」について話していた。「『おもてなし』っていうのはさ、ようするに、こうしときゃトラブルが最小化できるだろっていう防御策に過ぎないのよ」。そうなのか。「だって、オモテ無し、ってことはウラがあるってことだろ。いや、ウラしか無いかもしれんな」。そうなのか。

私の愛用各社のサービス向上を願う。

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