ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)

・これからの「仕様書」の話をしよう

今回からの連載は、いよいよ調達・購買担当者のための「仕様書の見方」をやっていこう。これまで調達・購買担当者がいかに仕様書を眺めればよいか、そして、いかに修正すればよいか(修正させるか)について述べたものはなかった。少なくとも、私が関連書籍を読む限りは存在しない。

「開発購買」という言葉だったり、「上流に介在した購買」という言葉だったり、なんでもいい。調達・購買部門が技術・設計部門とともに活動することの重要性が語られている。「開発購買」というフレーズをお題目に留めてはいけない。ただし、実際には難しい。これが本音だろう。なぜなら、「開発購買」を実行するためには、技術者と同等水準の技術・製品知識が必要だからだ。

調達・購買担当者には技術者と同じ「目」が必要になる。設計者が書いている仕様書について批判的観点で眺めねばならない。

ただし、調達・購買担当者は技術者ではない。

製品が結実するのは、仕様書である。「仕様書」といったが、これは別の言葉で言い換えてもかまわない。自社が要求する製品や商品を記述したものだ。では、調達・購買担当者としてこの仕様書のどこをチェックすればよいだろうか。

仕様書というと、直接材の読者を想定しているようだが、間接材の読者にも役立つ内容になっているはずだ。自分の業務に応用できるように想像しながら読んでいただければ幸甚だ。

まず、仕様書は6つの要素から構成される。

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内容は上記だ。そのとき、重要なのは3に記述した「事務要求」「技術要求」「管理要求」の三つだ。ここで、仕様書で求めるものを記載する。「何を」ほしいのか。それを明確化するわけだ。

仕様書を眺めるとは、まずこの「事務要求」「技術要求」「管理要求」が満たされているかを確認することだ。では、この「事務要求」「技術要求」「管理要求」とはなんだろうか。

順に説明していこう。まずは「事務要求」だ。

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そして、「技術要求」だ。

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三つ目が「管理要求」だ。

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そして、この「事務要求」「技術要求」「管理要求」を眺めるときに重要な観点がある。単にこれらを満たしていることを確認するだけでは、単なる管理屋にすぎない。それにそれなりの企業だったら、これら「事務要求」「技術要求」「管理要求」が満たされている仕様書がほとんどだろう。

ここに、調達・購買の思想を注入する必要がある。その思想とは、三つの排除項目である。下の図は「仕様書で排除すべき3つ」をあげた。

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・排他性の排除
・非代替性の排除
・不明瞭性の排除

の三つだ。「排他性」を排除する、というとわかりにくいかもしれない。「非」代替性を排除する、というのもわかりにくいかもしれない。それぞれ説明していこう。

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まず「排他性の排除」とは、要するに「メーカーや型名指定をやめさせましょう」ということだ。競合を活性化させねばならない場合に、事実上、仕様書によって1社、あるいは特定メーカーの特定製品のみしか「使えない」ことになっていることがある。それを指示する文言を排除するのだ。

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そして、「非代替性の排除」とは、「ガチガチの仕様条件だと、サプライヤーから安価な提案が出てきませんよ。だから、できる限りMUST項目を抑えねばなりませんよ」ということだ。

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最後に、「不明瞭性の排除」だ。これは、要するに「誰が読んでも明確な記述になっていないと、サプライヤーは見積作成が不可能になったり、バラつきが生じたりしますよ。だから、ちゃんと書きましょう」ということだ。

一般的にいって、同じ仕様書を提示しているのに、サプライヤー間で25%以上、見積りの差がついているときは、仕様書の精度を疑ったほうが良い(たとえば、同じ仕様書を提示して、サプライヤーAが100万円、サプライヤーBが125万円だったような場合)。これは一つの目安であるし、他にも価格差の要因はあるだろう。ただ、ほぼ同じものを提供するのであれば、25%も乖離することはあまりない、と考えてよいだろう。

さて、ここの「不明瞭性の排除」に調達・購買部門としての肝要がある。調達・購買担当者が読んでみてわからない仕様書はサプライヤーが読んでもわからない。仕様書を眺めるときには、「5W2H」を満たしているかを確認する必要があるのだ。

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5W2Hの確認とは何か。それは、上記表を元にチェックしていくことだ。ただし、これだけでは表面的でわからないだろう。次回は、具体例を通じて仕様書をいかに修正していくかを見ていこう。と、珍しく間接材バイヤーやシステム(IT)調達バイヤーにも役立つ内容を書いた私であった。

<つづく>

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