【問題提起編】アポ無し営業パーソンに会うべきか問題

『会うべきではない』~坂口孝則の意見

ところで、今回も、未来調達研究所のなかで話題になったことがあります。それは、「アポ無し訪問のサプライヤに会うべきか問題」です。つまり、アポイントがなく、突然に会おうとしてくるサプライヤと、面談するべきでしょうか? おなじく、弊社の牧野直哉と論争になりました。みなさんはどちらが正しいと思いますか。

私はこの問題に一貫して「会うべきではない」と答えています。

理由が三つあります。

1.人間としての常識

2.時間の無駄

3.例外処理の排除

まず、1.です。私は逆の立場で、他人の時間を突然に奪うことをしません。それは当然の常識だからです。もしかして、自分が最高の情報を与えられるかもしれない。でも、最低限、先方に連絡はすると思うのです。さらに、単なるご挨拶であれば、メールで挨拶します。

次に2.です。よく、「たまたまでも、会ったら、有益な情報を教えてくれた」というバイヤーがいます。でも、ほんとうにそうでしょうか。冷静に考えれば、本でも読んでいたほうが有益な情報を得ることができます。それに、有益な情報をくれるひとは、そもそも、突然のアポ無し営業をかけてこない気がします。

そして3.です。私は、「例外的にも会ってくれる」という弛緩をサプライヤに与えないほうが良いと思っています。私たちは、戦略サプライヤには会うし、非戦略サプライヤとは会話を薄くしたいはずです。でも、関係なく、たくさんの時間を会えるとしたら、私たちの戦略がブレてしまうのではないでしょうか。その意味でも私はアポ無し訪問のサプライヤには会うべきではないと思うのです。

いかがでしょうか? 牧野の意見は次に続きます。

『会うべきである』~牧野直哉の意見

皆さまは毎日大変お忙しい日々を送っておられるでしょう。根拠のない予算やコストダウン目標に対処し、納期遅延を解消させ社内の会議にも出席しなければならない。毎日余裕やバッファの時間などないかもしれません。そんな時間に追いかけられる中でもアポなしでやってくるサプライヤに会うべきと考えています。

アポなしサプライヤ来訪には2種類あります。一つは取引しているサプライヤ。もう一つは飛び込み営業のサプライヤです。後者は社内へアポなしで入るのは難しいので最近は少なくなっているでしょう。私はどちらのサプライヤの来訪も会うべきだと考えています。

まず「アポなし」なので会える時間の決定はバイヤに主導権があります。どんなに余裕がないと言っても「どんな要件で来訪したのか」を確認する数十秒が捻出できないバイヤはいないはずです。アポがないから数十秒で要件を確認した後、対応可能な時間を伝えたり、後日仕切り直しをお願いしたりといった対応も可能です。「近くまで来たので」といった理由で立ち寄ってくれた人に「お元気ですか?最近もうかっていますか?」と数分間近況を確認する時間も確保できないほど忙しいバイヤっているのでしょうか。調整して数分捻出する、あるいは同僚に来訪者へ伝言してもらうといった臨機応変さはバイヤに欠かせない対応能力の1つです。

アポなし来訪は失礼でありビジネスパーソンとしての礼儀を欠いた行動と判断するバイヤもいるでしょう。でも重要な要件でわざわざ来てくれたかもしれないのです。電話やメールでは筆舌に尽くしがたく、直接会って話がしたいほどに伝えたい出来事があれば、アポがあるなしで礼儀を欠いているかどうかより、私は話を聞きたいと考えています。サプライヤの営業パーソンが困っていて、バイヤとして何かサポートできる機会となるなら、私は協力したいのです。

実際は99.9%の営業パーソンは事前に来訪予定を確認してくれます。アポなしサプライヤ来訪に対処すべき、そう思っていてもなかなか実践する場面は訪れません。だからこそ「何かあったのかな?」と、アポなしサプライヤの来訪を千載一遇であり一期一会の機会と捉え「会う」と決めているのです。

インターネットを活用したコミュニケーションツールの発達により、実際に面談する機会は、これからどんどん減少してゆくはずです。来訪に費やす移動時間を考えると、サプライヤとの面談時間は減少しなければ人口減少で人手不足に苦しむバイヤの仕事が回らなくなります。これからの時代、人と会う必要性の判断基準は厳格化が進むでしょう。そんな時代だからこそ、突然の来訪にはそうするだけの理由があるはずと考えます。これからもサプライヤアポなし来訪には会うべきとの考えを持ち続けたいと思っています。

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