iPadを使ってみて想うこと(牧野直哉)
この原稿はiPadに打ち込んでいます。TwitterではiPadを買ったことを衝動買いとつぶやきました。実際そうです。たまたま予約しようかどうしようか、と悩みつつショップに立ち寄りました。すると、なんと在庫があるとのこと!予約しないと手に入らないとおもっていたので、その場で手に入れてしまったわけです。
実際使用してみてどうか。そうですね、とっても心地良い。機能的にはiPhoneよりも少ない。なんといっても、電話ができません(スカイプは可能)でも、元々ドコモの携帯と2台持ちしていたので、iPhoneでやっていたことは、すべてiPadで事足りる。そして、iPhoneと比較した時初めて、画面の大きさ、操作性は格段に良い、ということで、心地よいとなるわけです。これは、私の手が大きいという身体的な特徴が影響しているといえます。
先日、北海道へ出張しました。滅多に行けないため、二泊三日できうる限りの予定を入れました。目的は、サプライヤーとの打ち合わせであり、工場の訪問です。私は、初めて打ち合わせをするサプライヤーの担当者には、必ず自社の説明をします。今回は、その説明もiPadを使用して行いました。PowerPointで作成したファイルを画面上に映し出して行ったのです。
そして、東京からの移動中もiPadは大活躍です。iPodとしての機能があるので、音楽を聴きながら、「i文庫HD」というアプリを使用して、本を読みました。出張の際には、少なくとも1冊、二泊三日ともなれば2~3冊の本を持って行くのですが、今回の出張は持参しませんでした。
また、出張中とはいえ、たくさんのメールが送られてきます。iPhoneでもメールのチェックはできました。私の友人でも、iPhoneを使うようになって、パソコンの前に座る時間が減ったと話してくれた人がいます。私の場合も、読むだけであれば、iPhoneで十分と感じていました。しかし、返信を考えると、iPhoneは小さすぎてうちづらいと感じていました。こんな問題もiPadであれば解決です。今回も車や電車での移動中に、メールをチェックして、急を要するものには返信をすることができました。
こんな感じで、私はiPadを便利に心地よく使っています。上記の通り、一日使い続けても、家に帰り着いて、電池はまだ40数%残っていました。iPhoneに比べても大きいので、電池の容量に関しても有利なんでしょう。これも私にとっては大きなメリットです。
と、ここまでは、iPodを使用して、個人的に感じたメリットばかりを書きました。だから、読者の皆様にもオススメですっ!というかといえば、そんなつもりはありません。事実、周囲でiPadを購入して既に飽きてしまった人もいます。私自身も、家で、そしてオフィスでiPadを使っているか、といえば、そんなことはありません。やっぱりパソコンを使用して、メールの送受信を行っています。いろいろな資料を参照したり、仕事で使用したりはやっぱりパソコンです。確かに、iPadも机の上に置いています。しかし、パソコンがあり、使える環境において、あえてiPadのスイッチボタンを押すことはありません。
iPadはあらゆる場面で「場」をおもしろくするツールにはなります。先日行われた購買ネットワーク会の懇親会での出来事です。今回は、ロサンゼルスでIPOを立ち上げ、軌道に乗せた方をお招きしてスペシャルトークを行いました。その方を囲んで、海外での面白話に花が咲きました。中でも、海外に行った先での情報収集に関しては、実際にiPadでサイトへアクセスしてみました。そして、過去に行った先での写真を見ることで、話に具体性が増し、より話に深みが増していました。私の友人には、iPhoneで盛り上げる合コン!を熱く語る人もいるくらいです。確かに、アルコールが入った場所では、キーボードでない、より人に親和性が高いタッチパネルでの操作に合っているのでしょう。そして、かなり大きさが異なるにも関わらず、iPadとiPhoneの操作方法は同じです。iPadを使ったことが無くても、iPhoneやiPod touchを使用された方なら、普通に使うことができます。そして、使用経験の無い方でも、画面にタッチするという、シンプルな行動で事足りるので、然程ハードルも高くなく使うことが可能で、故に皆楽しめるわけです。
でも、毎日懇親会と呼ばれる飲み会や、合コンが有るわけではありません。iPodも、機種によって異なりますが、本体価格を分割払いにして、パケット通信をし放題にすることで、¥6,000~¥7,000位の費用が発生します。その発生する費用に対して、自分が納得できるかどうか。今、私はその部分を追求しています。具体的には、インプットはやりやすい環境を整備できた。問題はアウトプットです。実は、上記で例にした出張にしろ、購買ネットワーク会にしろ、私はパソコンも持っていました。実際、出張先で滞在したホテルでは、これまでと変わらずにパソコンで仕事をしていました。iPadは、机の上には置いていましたが、使わなかったのです。
パソコンよりもメリットがあるとすれば、バッテリーでの稼働時間の長さ、そして使用可能な状態までの立ち上がりの早さです。私の使用するパソコンはWindowです。パソコンにもスタンバイの機能はありますが、頻繁に繰り返すことは避けていました。動作が不安定になって、せっかく作っていたファイルが消えてしまうような経験を何度かしていたためです。その点での安定度合いはiPadに軍配が上がります。なので、情報にアクセスするといったインプットは、時と場所を選ばなくなったといえます。しかし、アウトプットが変わるまでには至っていません。なので今のところ、大きく自分の生活を変えることは有りません。まして人生なんか……変わってたまるか!とさえ思っています。
出張では、荷物としてiPadは増えましたが、本が減りました。持参する荷物の量としては、かなり減ったと感じます。これは鞄の重さに表現されますので、メリットとしては感じやすい。しかし、購買ネットワーク会への出席は、日中の外出ですので、明らかにiPad分持ち歩く重量が増えました。懇親会での会話を盛り上げるツールになったのは非常におもしろい出来事でした。鞄は重くなったけど、一つ楽しい思い出が増えた。これはなかなか同じ土俵での比較は難しい。でも、私は楽しい思い出を取ります。なので、このケースもメリットが大きいと判断します。
今、iPadやiPhone、そしてコンテンツとしての電子書籍の存在が相俟って、いろいろなメディアにさまざまな事が書かれています。「××が変わる!」というように、何もかも変えるパワーを兼ね備えたなんて喧伝するものも少なくありません。そして、実際私は使ってみました。繰り返しになりますが、情報へのアクセスは、より行いやすくなったと感じています。一方、アウトプットは、ほぼ何も変わっていません。例えば今回の北海道出張でiPadを使ってやってみたことは、見る、読む、聞くといった事ばかり。これまでもパソコンを使ってやれることばかりで、これまで実践してきたことばかりです。
iPadや、新しいiPhone、これら商品が発売される日には、主だったショップの光景が購入者第一号の喜びの声と共に報じられます。世の中が一変するような刺激的な言葉とともに、です。ほんとうでしょうか。実際に使ってみても、今のところ、そんなに大きな変化が訪れる予感はありません。きっと、訪れるとしても、徐々に少しずつなのでしょう。そして、後から振り返って、もしかすると、あれ(=iPadを買ったこと)が基点だったなぁ~と思い起こすことがあるかもしれません(ないか)。
一つ言えること、iPadにしろ、新しいiPhoneにしろ、ツールとしては極めて受動的なツールという点です。タッチパネルでの操作であり、画面以外にボタンは4カ所であり、そのうち2カ所は音声ボリュームの調整です。従いアプリなどは、制作者が考える使用方法がユーザーに受入れられれば売れます。手で画面に触れることで操作できるし、画面の大きさも自由に変えられることで、なんとなくフレキシブル感をえられるかもしれません。が、実際はかなり制約が多くて、作り手の意図がその内容、操作方法で、大きく使い手に影響するツールです。操作方法だけでなく、アプリの内容に関しても、作り手の大元(=Apple社)の意図が大きくなっています。実際に、Google携帯や、エクスペディアでは使えるのに、iPhoneで使えないアプリ(たいしたソフトではないけど)も存在します。
私は、自分から能動的に何かを行ってナンボという人間です。したがい、インプットも重要ですが、そしてどう動くかを忘れずにいたい。そして、なにもかも、あれもこれもとApple社に飼い慣らされたくないな、そんな想いが今、自分の中で強くなっています。確かにインプットには便利なツールです。しかし、だからといって、iPhoneやiPadが自分の人生や生活を変えてくれることはありません。だから俺はどうするの?って、いつも自分へ問いかけて、アウトプットに軸足を置きたいのです。それに利用できるなら、利用するだけなのです。