お金と仕事とポートフォリオ(坂口孝則)
・アマゾンと書籍
まだ宣伝はしていませんが、「調達・購買“戦略決定”入門」という本を出しました( http://amzn.to/avZ3FL )。それがまだアマゾンでは在庫切れなのですよ(26日時点)。本当であれば、このメルマガだけではなく、さまざまなところで宣伝したいのですけれど、やっぱりアマゾンに入荷していなければいけませんからね。
この「調達・購買“戦略決定”入門」ですが、その他のネット書店では在庫があるようです。たとえば、楽天( http://bit.ly/aDcREf )やbk1( http://bit.ly/9ThrDI )など。でも、たとえば7andY( http://bit.ly/c1O8mt )では在庫がなさそうです(同じく26日時点)。
さて、この本についてはあとで説明するとして、今回は違うことを述べたいと思います。
このようなビジネス本と、実際のビジネス、お金についてです。
このメルマガの読者の方のうち、私の本をお買い上げくださっているひとがいます。たとえば、私は「激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ」( http://amzn.to/446rFC )という本を出しました。
覚えていらっしゃる方もいるでしょうが、この本では「アマゾンキャンペーン」というものをやりました。要するに、特典をつけるから、ある特定期間中にアマゾンで買ってくれというものですね。私は音声ファイルとか、特別なpdfなどを用意して、このキャンペーンに臨みました。
結果は、アマゾンの総合ランキングで11位にまであがりました。凄いでしょ。ダイエット本と怪しげなスピリチュアル本に挟まれて11位ですよ。その後もかなり長いあいだ総合100位以内にとどまることもできました。
さて、これで私は儲かったのでしょうか。それがほとんど儲かりませんでした。アマゾンキャンペーンに要する費用は30万円にもなります。30万円とはどう考えれば良いのでしょうか。ご存知の方もいるでしょうが本の印税は一般的に10%です。最近は、出版社に企画を持っていったら、印税率が2~5%などということもあります。しかし、私の場合はまだ需要があるためか10%くらいです。
そこで計算してみます。30万円を取り返すには、本の価格が1200円ですから、一冊あたりの印税額は120円です。30万円÷120円=2500冊になります。2500冊ですよ。ちなみに、アマゾンに1位をとるためには一日で400冊が売れなければいけません。でも、逆にいえば400冊で1位になってしまうのですよ。
さて、計算ができる方であれば、アマゾン11位とはだいたい一日に何冊程度売れたかが想像できるはずです。それでしばらく100位以内にとどまっていたとは言いましたが、はたしてこのアマゾンキャンペーンで何冊が売れたでしょうか。2500冊を取り返すだけの効果があったでしょうか。
私は「会社が黒字になるしくみ」( http://amzn.to/aIA3O8 )という本でもアマゾンキャンペーン業者を変更してやってみました。でも、さほど効果や費用に変わりはありません。なかなか本というもので「儲けよう」ということは難しいということがご理解いただけたでしょうか。
・講演というビジネス
大声ではいえませんが、小声では届かないので言ってしまいましょう。ビジネス本を書いている人がどのように儲けているかといえば、「講演」なのですよ。ビジネス本を書いている人たちが集まると「講演のギャラ」について話題になるときがあります。その平均値は、90分から2時間で「5万円から50万円」というばらつきが生じているのです。
では、5万円の人の本より、50万円の人の本が10倍売れているのでしょうか。そんなことはありません。たくさん売れているのに、安いギャラで引き受けている人もいます。逆に、さほど売れていないのに50万円の講演しか引き受けないという人もいるのです。これはビジネスとしてとらえるか、趣味としてとらえるかによっても異なります。ビジネスとして考えるのであれば、同じことを10回やるよりも、1回だけで50万円稼げた方が良いですからね。
ここで簡単なビジネスモデルが成立します。50万円の講演ですから、年間10回引き受ければ「食ってはいける」というわけです。実際、10回程度で終わらせる人はいません(少なくとも私が知っている範囲では)。年間30回ほど引き受ければ、1500万円プレイヤーがいきなり誕生というわけです。
私は多くの場合は講演を断ってきました。申し訳ないものの、あまり「自分のためになる」と思えなかったからです。これまで私が考えたことのない未知なるテーマであれば引き受けます。しかし、既知のテーマであれば、なかなか自分が成長することはできません。同じテーマで何度も講演を引き受けてしまう人がいますが、「すげえなあ」なんて私は思ってしまいます。
それならば私は専門研修や専門セミナーで話しておいた方が、そのあいだに新たな発見もあります。だから、専門的な分野はずっと続けてきました。それが自分の原点だと信じるからでもあります。「会社が黒字になるしくみ」( http://amzn.to/aIA3O8 )を出したときは、「アイツもついに一般書の分野に行ってしまったか」と言われました。なわけねえだろ、です。今度の「調達・購買“戦略決定”入門」( http://amzn.to/avZ3FL )は超・専門書ですからね。
ただ、講演に話を戻します。講演というビジネスモデルは「個」に立脚しているものです。だから、さきほど、<50万円の講演ですから、年間10回引き受ければ「食ってはいける」というわけです>と書きましたが、これはなかなか難しい。ほんとうに、講演だけで食っていけば、先端の情報が入ってきません。現場の話題や手法についていけなくなります。そうすると、話も面白くなくなるものです。そうすると、講演にも呼ばれなくなるでしょう。ここにジレンマがあります。
・収入ポートフォリオ
私はサラリーマンであれ、フリーであれ、経営者であれ、「その人の話を、お金を払ってでも聞いてみたい人」がいるかどうかが、一つの分岐点だと思います。どんな立場であっても、その人の話を2時間5万円以上でオーダーしてくれる人がいるかどうかは一つの境目だからです。
さきほどのジレンマ、とはその「2時間5万円以上でオーダーしてくれる人」がいてからの話です。私は、自分の市場価値を高めることはもちろん推奨しています。ためしに、自分の話にどれくらいの価値がつくかをトライしてみたほうがいい、とも思っています。しかし、それができるからといって、講演だけで食っていこうとは考えない方がいいのではないかとも思います。
では、どうすれば良いか。要するに、「収入源の比率を変える」ということをやればよいのだ、と思います。これまで、「会社=100%」だったところを、「会社:会社外=70%:30%」、あるいは「会社:会社外=50%:50%」でもいい。ポートフォリオを変更すればいいのです。どんな人であれ、ポートフォリオが会社だけに偏っている人は危険だ、と私は思います。かといって、会社外だけを100%にしてしまうと現場の知を得ることはできません。そのブレンドを少し変えることを決意すればいいのです。
私と近い人にはこのことをずっと勧めてきました。「会社:会社外=50%:50%」ほどになった人はなかなかいませんけれど、「会社:会社外=80%:20%」くらいになった人はいます。私は「調達・購買“戦略決定”入門」( http://amzn.to/avZ3FL )で、「会社=100%」だった共著者たちを引き込みましたが、なにより会社外の比率を上げていくことのプロセスが愉しいのですよね。
もちろん、「会社=100%」であることの素晴らしさは否定しません。でも、それ以外の世界を見ることの愉悦について私はどうしても他者に勧めてしまいます。
私はアマゾンキャンペーンでさほど儲からない(むしろ赤字)であることと、講演にあまりハマルことのできない自分を述べ、その後ポートフォリオの組み換えについて話しました。これらは「本だけで儲けようとせず、講演だけで儲けようとせず、会社だけで儲けようともしない」仕組みについて述べてきたつもりです。それは集中先を一つではなく、複数に分散するということでもあります。
これまで何かに集中することのみが「良い」とされていました。しかし、そんなに物事は単純なのでしょうか。私は(大袈裟に言えば)人生の選択肢と収入源を複数持っておいた方が良い。一つひとつは大きなものではないかもしれないけれど、集まれば愉悦が生まれる。
そんなことをみなさまにお伝えしたいのです。