自由に生きる、という生き方(坂口孝則)
「利益は「率」より「額」をとれ!―1%より1円を重視する逆転の発想」という本を出したあと、といってもつい最近のことですが、テレビ出演の依頼がありました。これまで同種の依頼を断ってきた私ですが、承諾することにしたのです。
といっても、どの番組かをお伝えすることはありません。すでに、3回ほどの収録が決まってしまいましたが、番組名をお伝えするのは大変残念ながら(笑)、今回の趣旨とは異なるからです。
さて、なぜ私がテレビに出ることを承諾したかというと、一言でいえば「テレビに頼らなくても、生きていけるだろう」という直感がありました。逆ではありません。「テレビに頼らなくても、生きていけるだろう」と思ったからです。
「テレビに出ることで生計を立てようと決意した」という言い方ならばわかります。しかし、あくまで私は、「テレビに頼らない」だからこそ「出ても良い」という判断だったわけです。
これまで、私は一つの収入源や一つの仕事に依存することに異を申し立ててきました。もちろん、一つの仕事にのみ没頭することは美徳かもしれません。しかし、バイヤーであれば、サプライヤーにたいして「生産地を分散させることによる、供給リスク低減」をお願いしてきたはずです。サプライヤーにたいして、「供給リスク低減」についてお願いしているにもかかわらず、自分自身はたった一つの会社に収入源を頼ってしまうことが、とても矛盾したように私には感じられました。
おそらく、究極的な意味で、ここまで自分自身を追い詰める必要はなかったでしょう。ただし、私はある意味でマジメすぎるところがあり(自分で言ってしまいました)、自己の発言と、自分自身の現状に乖離があることを、どうしても許せませんでした。だから、自分自身も収入源と仕事を分散させ、「どこか一つが潰れてしまっても、大丈夫」という状況を作り上げたわけです。
ただ、このような態度には批判が伴います。さきほど挙げたように「目の前の仕事にのみ取り組めばいいのだ」という批判や、「会社員は副収入を得ることは禁じられている」という批判がありました。
私は、「目の前の仕事にのみ取り組」んだ挙句に会社からリストラされ、行き場をなくした社員たちを何人も知っていますから、とてもその生き方を他者に勧める気にはなりません。もちろん、これは生き方、というより趣味の領域ですから、「目の前の仕事にのみ取り組」むことに反対したいわけではないのです。
また、通常、会社員が禁じられているのは「二重被雇用」であって、「副収入を得ること」を禁じられているわけではありません。もし、そうだとすると、株の売買や、たとえばブックオフで本を売却することも「副収入」ですからね。それを禁じることができるとは、とても思えないのです(裁判の判例もあります)。しかし、一つの会社外からお金を得ることに、どこか賛成できない人もいらっしゃるでしょう。私は、一つの会社のみからお金を得ることも、別に反対したいわけではありません。
ただ、と書いてみます。ただ、もしほんとうに「人生のリスク分散」を図りたいのであれば、今日から、一つでも良いので「会社外で稼ぐ方法」について考えてみるのはいかがでしょうか。そう勧めてみたいのです。
もちろん、「今の会社は絶対に俺をクビにしないだろうから、そのような検討は不要だ」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。それであれば、私はこれ以上お勧めすることはありません。
しかし、今の会社と将来に、少しでも不安を感じている人であれば、会社外に出てみて自分の実力を試してみるのも悪くないと思うのです。たとえば、1時間の講演をしたとしたら、いくら払ってくれる人がいるか。文章を書いて発表したら、何人が買ってくれるのか。個別でコンサルティングをやったとして、何社がお金を払ってくれるか。
そこには、会社内での優しい緩やかな雰囲気とは、まったく別物の「何か」があります。冷たく、白黒のはっきりした、それでいて「やりがい」にあふれた世界が広がっています。
私はかなりのノウハウがたまりました。いつでも、それを公開す準備はあります。会社に縛られず、「自由に生きる、という生き方」を実践なさりたい方へ。「自由」ってのは、おそろしく、それでいて愉しいものですよ。