本田宗一郎さんの熱、小倉昌男さんの気迫

当ブログをお読みの方の大半は調達・購買に携わっています。調達・購買とは、大きく「製造・物流」にカテゴライズされます。この領域の革新をみなさんは目論んでいるはずです。ところで、この「製造・物流」領域で、直接的に調達・購買ではないものの、私が心の師と仰ぐのは本田宗一郎さんと小倉昌男さんです。

私は、戦国武将から学ぶビジネス術とかをあまり好んでいません。村上龍さんもどこかで書いていましたが、彼らが現代に生きていたからといって、現代の複雑怪奇な問題をクリアできたとは思えないからです。その意味で、本田宗一郎さんと小倉昌男さんも過去の人ではあります。ただ、この二人から学ぶことは多い。

たとえば、本田宗一郎さんはホンダが自動車を生産しようとしたとき、経産省(当時)から反対を受けました。もうこれ以上の自動車メーカーは不要だというのです。本田宗一郎さんは、すぐさま経産省に乗り込み、「おれたちが新しく自動車を作りはじめるのは、迷惑だっていいたいんだろう」と役人に凄み、かつ「ばかやろう」と叱りつけ、多くの自動車メーカーが競争することによる反映を説きました。

現在、どちらかといえば、自動車産業は国に対抗するどころか蜜月関係を築き、その刃をおさめている気がします。テスラモーターズやローカルモーターズ、またはアジア各国が勃興しているなか、現代で本田宗一郎さんが生きていたらどう思うでしょうか。

そして、もう一人は小倉昌男さんです。

小倉さんが書いた「経営学」( http://goo.gl/pe9IGx )は感動的な名著です。同書で氏は宅急便事業の立ち上げから普及までの死闘を描いています。そのなかで、新規に配送地域を広げようとした際のエピソードが出てきます。ヤマトは、全国にその網を拡大しようとします。が、既得権益をもつ地元業者を守ろうとする運輸省の役人は<「既存業者が反対を取り下げればいつでも免許を下ろしてやる」と、公言するありさま>(P161)でした。

そこから小倉昌男さんはなんと行政不服審査法にもとづき、運輸大臣を訴え、公聴会を経てその事業を認可させます。<ヤマト運輸は、監督官庁に楯突いてよく平気でしたね、と言う人がいる。別に楯突いた気持ちはない。正しいと思うことをしただけである。あえて言うならば、運輸省がヤマト運輸のやることに楯突いたのである>(P163)と痛快です。

そういえば、以前アメリカ人と話しているときに面白いことをいっていました。アメリカ人いわく、「アメリカの企業は、法律ができたら、独自解釈で突き進み、自らスタンダードを創る。だけれど、日本人は、法律ができたら、つねに役所に運用基準を作れという。これでは国の指導抜きに事業ができるはずはない」と。

私たちは、ときに「この国は、規制ばかりだ」と思う場合があります。しかし、それはもしかすると、私自身が作り上げたものかもしれません。この偉人の二人に学ぶことは多い、と私は思います。それは役所と闘うだけの意味ではなく、「正しいことを突き通す」勇気でもあります。

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