社内がビクンッビクンッする方法
白い紙を用意してください。左に「社内関係者」、あるいは「設計・開発部門」と書きます。真ん中に「製品」と書きます。右側に「メリット」と書きます。そのあとに、「製品」にバツ印を書いてください。それを手帳か、机に貼っておきます。それが社内関係者をビクンッビクンッさせる方法です。
私はこれまで何人ものひとに従事してきました。なかには師匠と呼べる方も何人かいらっしゃいます。師匠の共通点は、多くの場合、技術部門出身だったことです。それはたまたまかもしれませんが、彼らが発していたある種の醒めた視線は参考になりました。というのは、彼らは、仕様やサプライヤを所与のものと見ないのです。あくまで現時点でのベター案と考えます。これはどういうことでしょうか。
調達・購買担当者は、社内関係者や設計・開発者から届く仕様を、絶対的なものと考えがちです。それを前提に、QCDの最大化を目指します。しかし、その仕様は絶対的なものではありません。あくまでも、その時点で考えうるものです。なぜならば、社内関係者や設計・開発者は、究極的な意味で、製品がほしいわけではありません。究極的な意味で、そのサプライヤと付き合いたいわけではありません。
これは重要な観点です。製品やサプライヤが絶対ではなく、その製品やサプライヤからもたらされる便益こそ欲しています。この観点をズラすと、あるいは失うと、ロクなことにはなりません。
調達・購買担当者はどうしても製品を絶対的に考えてしまうからです。それが「製品」にバツ印を書いてください、とお話した理由です。
社内関係者や設計・開発者は、暴論では製品なんてどうでもいいのです。どのサプライヤだっていいのです。ただ、その製品によって得られる機能とかメリットがほしいわけです。その製品やサプライヤ抜きでも、その機能やメリットが得られるのであれば、その代案でよいわけです。これは個人の買い物を考えるに、当然ですよね。だって、ユニクロで服を買うときに、その服の機能や、それなりのオシャレさとかを考えています。別にユニクロでなくってもいいし、あるいは服でなくても良いかもしれません。
それは企業の調達でも同じくことです。だから、社内関係者や設計・開発者が出してきた仕様についてあれこれと模索する前に、その仕様が目指すもの、その仕様によって得たいものをつかむ必要があります。当たり前ですけれど、資料にはそれぞれ目的がありますから、それをちゃんと把握するわけです。
トップバイヤーになるためには。あるいは社内で活躍するためには。あるいは社内関係者や設計・開発者とうまくやるには。さまざまな課題がありますが、そこに魔法の杖なんてありません。ただアタリマエのことをバカのようにチャントやるだけです(ABCの法則)。近道はありません。
でもね。一度、社内から「こいつはわかっているな」と思われたら、こっちのものなのですよ。相手の真なる欲求をまずは聞き出す。あるいはえぐり出す。当然のことのように思えて、そこからほんとうの調達・購買改革がはじまると私は思います。