本田宗一郎氏の、心が震える調達を実現しよう
私は本田宗一郎氏のことを、かなり尊敬しています。いつも氏の書籍を読むと、胸を衝かれます。もっといえば、くじけそうになると、つねに読み返します。
組織にこびりついている、官僚主義、しがらみ、悪口、派閥、あきらめ、責任の押し付けあい……。それらに翻弄されていると、いつのまにか、感覚が麻痺し、上手くやり過ごすことだけを考える社員ができあがります。パワーポイント資料作成だけが上手になり、何か新たなことがはじまろうとすると「社内ルール上の問題があります」とつっこむだけになるのです。
「やってみもせんで、何がわかる」と本田宗一郎氏は語っています。みんな、頭が良すぎて、結果を予想しすぎてしまうのです。実行もしないのに、「どうせダメだよ」という達観。私たちは、いつから、走ることを忘れてしまったのでしょうか。
私がセミナーで話し、質問をもらう場合があります。たまに「ウチの環境では、難しいんですよ」とおっしゃるひとがいます。私はそのご質問の意図がわからずにいます。できないことを承認してほしいのでしょうか。本田宗一郎氏は「新しいことをやれば、必ず、しくじる。腹が立つ。だから、寝る時間、食う時間を削って、何度も何度もやる」とまでいっているんですよ。生きている以上は、あきらめずにがんばりましょうよ。
私をさらに苛立たせるのが、若いくせに、社内官僚みたいな達観した調達部員がいることです。何かを変えようという意気込みがまったく感じられない。上司の意向しか気にしていない。私が何かを訊いても「部長に確認してみます」としかいえない。てめえの意見は無いのかよ、と呆れてしまいます。
「会社はつぶれてもいい。人の真似だけはするな」。これも私が好きな本田宗一郎氏の言葉です。私はかつて『だったら、世界一の購買部をつくってみろ!』という本を書きました。ストーリー仕立ての本で、私は登場人物にエピローグで、こう語らせています。これは本田宗一郎氏の影響でした。
<私は最後に伝えたい言葉があります。下らないと思われても、聞いてほしい言葉があります。それは、『身の程を知るな』ということです。身の程なんて知ってしまったら、誰が現状を変えようとするでしょうか。誰が、今の時点の自分から想像もできないような将来を実現させようと動き出せるでしょうか。『身の程を知るな』。絶対に知らないで下さい。身の程を知らずに、ずっとずっと挑戦し続けてください。そして、いつか私とまた会いましょう。そのとき、どっちの夢の方が大きいか比べましょう。>
「これはできません」
「あれもできません」
「社内から反対されています」
「結局は調達って影の部門なんですよ」
「どうせ変わんないでしょ」
「無理でしょ、無理」
これまで、どれだけ多くの方々から、コンサルティングの現場で、こういった言葉をもらったでしょうか。本田宗一郎氏の「困らなきゃだめです。人間というのは困ることだ。絶対絶命のときに出る力が本当の力なんだ。人間はやろうと思えば、大抵のことは出来るんだから。」という発言をいつも思い出しています。マルクスも、問題というものは、認識された瞬間に、解決策が与えられている、といったことを述べています。