新たなテクノロジーが調達業務をどう変えるか

ビットコインという仮想通貨があります。数年前に数百万円で買ったものが、何億円になったとか、そういう景気のいい話にあふれています。ビットコインは私がためしに買った際は5万円で、これを執筆している時点では32万円になっています。しかし下がるのも急で、資産としてはまったくオススメできません。危険すぎます。

ただ私は、仮想通貨を支えるビットチェーン技術について注目しています。厳密な解説ではありませんが、これは仮想通貨のネットワークにつながるサーバーすべてに、暗号化したうえで、取引履歴情報をためる仕組みです。これが革新的な技術です。一つひとつのサーバーは完璧ではありません。しかし、全サーバーがダメになるのもありえないのです。

だから、一台だけをハッキングしても、全体としてはなんら影響がありません。これまでは中央集権的な仕組みが取られていました。中央のマシンにのみデータを保存し、厳重に管理していたのです。だから中央のマシンがハッキングされると、システム全体が停止してしまいました。ただビットチェーンの仕組みであれば大丈夫です。

仮想通貨で使われる、このビットチェーンですが、この取引履歴情報を記録できる強みを使い、他のビジネスに応用しようとする動きが出てきました。たとえば、エバーレッジャーは、ダイヤモンドの取引情報を、このビットチェーン技術を使っています。取引情報が保存されるのですから、原産地証明のみならず、購入者履歴もわかります。その他、アセットチェインなど加工品の加工履歴や流通履歴を保存しています。

これをさらに応用し、自動メンテナンスなども考えられています。たとえば、冷蔵庫があるとします。そこに使われている部品に不具合が見つかりました。部品はロット管理されています。しかし、これまでは、具体的に世界のどこにある冷蔵庫に、不良部品が使われているかまではわかりませんでした。しかしブロックチェーンによって、部品の材料、工程、工員、期日、最終製品番号……といった紐付けがなされれば、ただちに交換やメンテナンスができます。

これらを「スマートコントラクト」と呼びます。事前に決めた方法でどんどん取引を行うことです。いま、どんな企業でも、サプライヤのティア管理が問題です。つまり、どの部品をどのサプライヤが生産してくれているのか、ティア3とかティア4まではわかりませんでした。しかしブロックチェーンを使えば、これらの問題が解決できる可能性があります。また災害のような際にも、事前に対応を規定しておけば、品質管理部門が動かなくとも、すぐさま対応できます。

いや、もっといえば、これまでの過去実績や過去パターンを記録し、さらにはロジックに基づいて行動するのですから、もはや調達部員すらいりません。少なくとも、過去から予期できる行動を取るレベルの部員は不要になります。これは私の議論ではありません。ブロックチェーンを使った組織を論じる、DAO(自律分散型組織)の議論では、むしろ、経営者すら不要になるとされています。たしかに、普通に予想できるレベルの意思決定だけを繰り返すなら、機械が良いですものね。

かつて映画「ブレードランナー」では、「その人の記憶を持っていること」が、その人である理由とされていました。ビットチェーンが、会社の取引履歴情報をすべて有しているとしたら、それは、そのシステムが会社そのものになるということです。

ところで、将来的には、DAOの議論のように人間がかなり減るかもしれません。しかし、すぐではありません。私は「機械 対 人間」なる議論が間違いではないかと、最近は考えています。

むしろ「機械を使えない人間 対 機械を使える人間」でしかないのではないでしょうか。機械を作ることはできなくても、潮流や仕組みや操作方法くらいは貪欲に吸収すべきではないか、と私は思います。そうすると、テクノロジーに任せるところと、人間が担わないといけない領域がわかるはずです。そのようにして、テクノロジーが調達を変えるのです。

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