The対談 ~もう駄目だと思ったらどうするか? 2
●「あきらめ」の効用
坂口:自分の思い通りにいかないというケースと、あともう1つは、自分が望まない大きな環境変化によって起こってしまうケースの原因は、ちょっと違うような気がするんです。1番目から考えると、自分の個人の力が相対的に小さくて、相手からあまりちゃんと扱ってもらえないと。それがドンドンストレスになるとしたら、その場合って答えがないですよね。どうしたらいいものなんでしょうか?
牧野:そもそも思い通りになると思わないところから出発する、ということじゃないかなあと思うんですけど。
坂口:なるほどね。あきらめるわけですね。
牧野:どうやって自分の意思を通せばいいのか。例えば年間数万円の購入額で、10%下げたとしても、数千円でしょう?それくらいの取引なのに、わざわざ交通費と時間を費やし、相手の心証を著しく害してまで自社に来させて交渉するかどうか。
坂口:そういった場合、教科書的にはまず支出をABC分析しなさい。重要な位置にある品目から順番にコスト削減しなさいというのがセオリー。僕もそうやって教えてはいるんですけど、実際どうなっているかというと、Aという品目を担当している人と、Cという品目を担当している人が、イコールだったらその話は成り立つんです。でも、実際はバラバラだから、Aさんだけがコスト削減をしなさい、Cさん何もしなくていいってことにはならないじゃないですか。
どんな分野も、もう数%ずつみんな頑張ろうぜって進んでいきますよね。そうなると、最初は年間購入金額数十万円を交渉してもしょうがないと、多分みんな心の中で思ってると思うんですよね。
分母の絶対金額があまりにも違うから、エース級の社員が0.1%でも下げたら、俺が努力して下げる50%ぐらいに値するじゃないかと思うわけです。その場合、マネジメントとしては、CさんはCさんで頑張れって言い方をするでしょ。実際。それはCさんからすると、俺がせっかく相当頑張っても微々たるものなんだけども、組織的に求められるからしなきゃいけないっていうのがあるんじゃないですか。
牧野:それはそうなんですけど程度問題。調達担当者によっては、サプライヤさんとのやり取りの中で、はっきりと「今の購入規模だったら、電車代もでないんで」と言われた経験があるんです。それでも来いっ!て言う調達担当者もいるんですよ。
坂口:なるほど。それは、言ったらうまくいかなくて、精神的に病みますね。
●切りかえしの重要性
牧野:そこまで言われたら、私だったら自分で行くんですよ。そういう切りかえしをすればいいのに、とにかく来させてしまったのが問題。
坂口:なるほど。弁護士がその技を使いますよね。弁護士が自分から出向くっていうことはまずないですから。ほぼすべて自分とこに呼びますからね。場の設定というか、慣例も含めて、有利にするために。ほかの職業で先生と呼ばれる人たちは、自分から向かいますけど、弁護士だけはすべて呼びますからね。
サプライヤが自分の意志とは違う動きしかしなかったとき、心を病まないようにするためには、あきらめないんだけども、少なくとも結果が出なくても、頑張ったアピールぐらいはするぐらいの上手さがあればいいんですか。
牧野:それは必要。あと、調達購買部門にサプライヤの営業マンが来てくれるのがあたりまえって先入観も捨てちゃったほうがいいですね。ただ、「自分から行きます」っていうと、「何でうちらが出向くんだ」っていう上司とか同僚の方に囲まれている皆さんが多いと思うんですけど、結果としては調整しやすいはず。
坂口:コストダウン目標値が5%のときに、5%ぐらいをやっていたという人は出世するかもしれませんけど、それ以上8%やった人が、より出世してるかっていうと、そんな感じまったくないですよね。でも、この人に任せたら大丈夫っぽい雰囲気があるってことでしょう?
牧野:出世には、QCD目標の到達率よりも、トラブルシューティングが上手くて、派手に解決するほうが効果的かも。
坂口:あと、雰囲気で、一応仕事は速いしちゃんとしている人っていうのは出世しやすいでしょうね。