調達人員が真面目に逮捕される日

ほとんど報じられていませんが、日本のビジネスパーソンが60人以上も米国の刑務所に入れられています。それも殺人とか窃盗、詐欺ではありません。通常の企業活動において有罪とされているのです。理由は反トラスト法違反です。つまり、企業間で不当に安価な売価設定を協議し、ゆえにそれが米国の自由市場を歪めた、というのです。日本企業同士で結託して、低価格な製品を販売した、という疑いです。

その多くが自動車産業のひとたちで、かなり厳しい処分といわざるをえません。さきほど「ほとんど報じられてい」ないと書いたので、これを読んでいるひとの多くは知らないのではないでしょうか。企業は自ら、自社に逮捕者が出たという事実を好んで公表はしません。また、反トラスト法違反といっても、米国内で談合したわけではないのです。日本で談合の疑いをかけられた結果なので、これまた厳しいとしかいいようがありません。

日本ではある意味、談合には、ゆるやかに許容する雰囲気が一部ありますが、米国では同業の経営者同士が話しているだけでも、反トラスト法違反を疑われかねない、という状況です。米国は魅力的な市場であり続けますが、こういった隠れたるリスクを見つめなければなりません。

ところで、調達人員同士で情報交換会を実施するケースも、同様の注意が必要です。これは独占禁止法という国内法だけではなく、米国の反トラスト法も考慮しなければいけないということです。こういった集まりが増えてきたのは、私の責任です。10年ほど前から、私は調達人員を集める会を開始しました。それに派生してさまざまな調達・購買関連の会合が催されています。もちろん手法を共有するのであれば問題がありませんが、よりいっそう高い倫理観が必要ではあるでしょう。

話を変えます。

これまたほとんど報じられていませんが、企業の業績開示ルールが変わります。URLを載せると、(サーバーセキュリティの問題で)このメルマガが届かない方がいるので、各自で検索をしてください。「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」と検索いただくと、日本取引所グループが四半期決算短信の作成要領を発表しています。様式を見ていただくとわかりますが、なんと通期の業績予想が割愛されることになりました。これは恐るべき変容です。

もちろん企業は期初に計画は立てるのですが、四半期のタイミングでは年間を通じた予想は不要となります。単に、「ここには投資者が通期業績を見通す際に有用と思われる情報をご記載ください」と雛形には書かれているていどです。これはあまりに大きな変化です。これから通期予想が廃止されることになれば、企業の経営企画部門は楽になるでしょう。しかし、取引先と対峙する立場からすると、取引先の公開情報が消えてしまう状態です。

前に反トラスト法の話をしました。調達・購買部員は、企業の通期予想を聞く機会があると思います。しかし、上場企業にとっては、開示の義務がなくなるのですから、それを訊いた調達・購買側からすれば、インサイダー情報となります。単なる企業の通期予想情報がインサイダー情報になるのです。企業とのふれあいは、実は大きなリスクになる時代が到来しています。

ほとんどのひとはこの開示廃止自体を知りません。しかし、現代的な意味で調達・購買人員が扱う情報が、かなり注意をもたねばならなくなっています。これまでは自由自在に情報収集ができました。もちろん、これからもできます。しかし、情報を有していることが、かなりのリスクを伴う時代がやってきているのです。

いや、ほんとうに、情報の取扱しだいで、調達・購買人員が逮捕される時代なのです。。

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