ビジネスパーソンがテロに遭わない方法
あるひとの発言が炎上しました。「テロを恐れる必要はない。これまで日本人の犠牲者数を見ても、限りなく対象となる確率は低い」といったものでした。あまりに不謹慎だとして非難轟々となりました。バングラデシュのテロで多くの犠牲者が出たあと、かなり看過できない発言だったのでしょう。
さて、実態を見てみましょう。日本人は年間1620万人が海外に出ています。今後、かなり大胆に仮定して年間10人(日本人)がテロの標的となるとします。そうすると、確率は10割る1620万人ですから、0.00006%となります。よく30年分の計算をすることが多いので、30倍してみましょう。よく「今後30年で遭遇する確率」が計算されます。0.00006%に30倍すると、0.002%となります。
この計算はあまりにも雑で、欠陥があると理解しています。しかし、まずは議論をわかりやすくするために設定しました。それにたいして、他の確率はどの程度でしょうか。
おなじく30年での遭遇確率でいうと
テロ(上記計算)0.002%
航空機事故で死亡0.002%
交通事故で死亡0.20%
火災で死傷0.24%
台風で死傷 0.007%
となります。
なるほど、「テロを恐れる必要はない。これまで日本人の犠牲者数を見ても、限りなく対象となる確率は低い」という発言は、たしかに正しく、飛行機事故と同程度です。たしかに、一部のひとを除けば、飛行機に乗らない、という選択肢はありません。だから、「ビジネスパーソンがテロに遭わない方法」とは、何もしなくても、ほとんど遭わない、ということになりそうです。
そして、テロに戦々恐々とするよりも、日々の交通事故や、火災、台風対策をやったほうが、実りがありそうです。
しかし、ここからがややこしいことです。では、「テロを恐れる必要はない。これまで日本人の犠牲者数を見ても、限りなく対象となる確率は低い」というでしょうか。いわないでしょう。たとえばテレビに出ているコメンテーターが「アホくさ。それよりも交通事故対策しよう」とはいわないはずです。これは批判を恐れているからとか、空気を読んでいるという意味ではありません。純粋な気持ちからです。お亡くなりになっている方がいて、その方々が日本のために尽くしていたとすれば、純粋に弔いの気持ちをもつからです。
だから、メディアは過剰になるのです。メディアのスタッフも必要以上にテロの恐怖を煽るつもりはありません(少なくとも知っている限り)。しかし、結果として、「テロは怖いですね」という雰囲気にならざるをえないのです。
防ぐ手立ては、視聴者側にあります。メディアがいっていることは本当なのか。具体的に数値で検証しても正しいのだろうか。メディアを見ている側が批判的精神をもって眺めるべきなのです。それは、メディアの構造上しかたがありません。
小学生のころから、国語、算数、社会、理科、そして最近では英語も学んでいます。しかし、一日のうち人間がもっとも触れるメディアについて、その見方の教育を受けたひとはいますか。国家や行政にまかせてもダメです。一人で、やれることからやりましょう。少なくとも家族で、「メディアが常識として報じているもの」が真実かどうか話してみませんか。