連載5回目「購買はモノを買ってXXを売る」~自然災害の多発で思うこと (調達・購買のリスクマネジメント)その2
リスクマネジメントというと、BCM(Business Continuity Management 事業継続マネジメント)や BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)などが思い浮かびます。しかし、ここでは調達・購買のリスクマネジメントの全般論ではなく、前回述べた自然災害に関連にする言葉に焦点を当てて述べたいと思います。一つは、「想定外」で、もう一つは「広域性」です。
想定外 :
9月上旬の台風と地震の報道でしばしば、「想定外」という言葉が使われました。自然災害の例では、台風21号の場合は高潮の大きさでした。北海道の地震も、認識されていなかった活断層によるものでしたので、「想定外」と言えます。また、東日本大震災では福島の原子力発電所を襲った津波の大きさがあります。
広域性 :
広い範囲に大きな被害をもたらすことです。自然災害では、地理的に広い範囲への災害をもたらすもので、巨大地震がこの代表例です。この広域な被災は、調達・購買取引先の生産活動に大きな影響をもたらし、未納など調達・購買資材の供給面で長期に及ぶ問題を引き起こします。これは、東日本大震災で調達・購買の皆さんが経験をしていると思います。
しかし、ここでは、自然災害での「想定外」や「広域性」ではなく、経済活動や事業活動面での調達・購買リスクの「想定外」や「広域性」を、特定の例で述べてみたいと思います。この「想定外」や「広域性」の具体的な説明をする前に、調達・購買のリスクマネジメントについて述べますが、全般論ではなく、後ほど述べる調達・購買リスクの「想定外」や「広域性」についての説明の流れについての、基本的なポイントに触れます。
リスクマネジメントは、リスクの洗い出し、リスクの分類・位置付け、リスクへの対応、BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)などからなっていますが、ここではBCPの時系列での対応についての概要を述べます。具体的には、異常事態が発生していない平常時の対応、異常事態発生後の初動対応・暫定復旧・復旧対応そして平常運営への全面復旧です。それぞれについて概略は、以下の通りです。
(1)平常時の対応
*運用体制確立
*事前対策の実施
(2)初動対応
*影響軽減のための緊急措置
*対策組織立ち上げ
*情報収集
(3)暫定復旧
*代替手段による対応
*最も優先度が高い業務の実施
*経営資源のシフト
*進行状況の確認
(4)復旧対応
*復旧活動の拡大
*全面復旧時期の検討・決定
*取引先など関係外部への支援
(5)全面復旧
*平常運営への復旧
次回からは、経済活動や事業活動面での調達・購買リスクに関する「想定外」や「広域性」の具体例で、上記の時系列での対応を説明します。
著者プロフィール
西河原勉(にしがはら・つとむ)
調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士
総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験
・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)