調達・購買はお笑い芸人から学べ(坂口孝則)
これは怪しげな金融商品の勧誘ではありませんのでご安心を。
以前、メディアを騒がせているひとがいました。それは悪い意味で騒がせていました。なので、ここでは固有名詞を書くのを省きます(趣旨ではないからです)。メディアはそのひとの悪い面ばかりを報じます。しかし、私はそのひとが有名になる前に話を伺ったことがあり、大変に聡明で真摯で、かつ過激なひとでした。
たとえば、よくビジネスパーソンに向けて「挑戦しろ」とか「自分の殻を破れ」とかいいますよね。でも、誰だって多少は挑戦したいとか、自分の殻を破りたいとかくらいは思っているわけです。問題なのは、それができないこと。わかっているけれど、できない。それが実際なので、いくら挑戦しろと叫んでも誰も挑戦しません。おそらくこれは会社の上司から部下へのアドバイスも同じ構造を持っているでしょう。
そこで前述のひとの話です。彼は面白いことをいっていました。「挑戦しろといっても、誰も挑戦しません。勇気がないからです」と。「でも、誰しもすぐに挑戦できるようになる、具体的な方法があります」。それは? 「簡単です。手取り給与と同額の賃貸物件を借りればいいのです」。私はこの具体的な提案に驚きました。
これはつまり、給料の総額25万円で、手取りが20万円だとしたら、家賃20万円のマンションを借りろ、というわけです。まあたしかに具体的だけれど、これまた過激だなあ、と私は思ったのでした。しかし、このひと自身は実際にこの方法で退路を断ち続けてきました。
ちなみに私は某有名お笑い芸人から直接、まったく同じ話を聞いたことがあります。そのひとも、自分の芸を磨くために給与同額のマンションを借りたそうです。そうすれば、番組収録中に、少しでも面白いことをいうように努めるようになったのだとか。
それともう一つ。私は会計士さんに会計事務を依頼しているのですが、「クライアントに天才が一人いる」とおっしゃっています。残念ながら私ではありません。そのひとは、まだ20代ですが、会社を4年で3社創立し、そのすべてを売却し10億円近くを手にしています。
おそらくネットなどで検索すれば出てきます。スマホアプリなどを手がけるひとで、前職も高給でしたが、そこからの挑戦でした。しかし、挑戦とはいえ、あまりに軽やかです。意気込むのではなく、さらっとやってのけているわけですから。
すべてのコツは「すぐさまやってみる」ことのようです。悩んでいるヒマがあったら、あるいは考えているヒマがあったら(考えることよりも行動が多くを教えてくれるのでしょう)、商品のプロトタイプを作ってみる。「こんなことできたらいいな」と思ったら、その瞬間に秋葉原にいってパーツを買ってみる。たとえ、自分は何の技術的能力がなくても、現在はネットで調べればいくらでも情報が出てきます。
ちなみに、これまた違うお笑い芸人のひとから同種の話を聞きました。
お笑い芸人とはネタの広さで勝負しています。だから、少しでも気になったら、その瞬間にレンタカーを借りて日本各地をまわる、と。クルマでまわるときは、道沿いで気になる農作物があるときには、その農家のおじさんに必ず話しかけるそうです(いきなり有名人に話しかけられたら驚くでしょうね)。
ギリギリに追い込む技。そして、後先を考えずに動く技。調達・購買担当者が、どう学びにつなげていただくかは別として、ニュースを見ていて共有したくなったので、この記事を書きました。