【皮肉】企業の研究部門が金持ちを産んだ理由(坂口孝則)
私の知人なら知っているでしょうが、私は飲み歩くことをしません。イベント帰りの打ち上げで居酒屋に行くことはあります。ただ、一人でふらっとバーに行くこともありませんし、一人でスナックに入ったことすらありません。
ただ、まれに、スポンサーの方とかと銀座や歌舞伎町に行くことがあります。その場で、さまざまな成功者を紹介されます。相手からすれば、よくわからん兄ちゃん(私のことです)を紹介されてもお困りでしょうが、仲良くなって、これまでの人生を語ってくれる機会があります。
なかには比較的に若い方もたくさんいます。もちろんそういう富裕層がいるのは想像できます。しかし、飲み代に毎晩20万円ずつ使って、朝食もホテルでしか食べない、といったひとに実際お会いすると、それはそれで衝撃的です。
そういった実業家の富裕層には二通りいて、会社を成功させたひとか、会社を大企業に売ってしまったひとです。そして若い方は圧倒的に後者です。ある方がおっしゃっていたのが示唆的なので共有します。その方いわく「いまの日本で成功するのは簡単だ」と。なぜならば、「大企業の開発や研究部門が本来の仕事をしなくなったから」だと。どういうことでしょうか。
大企業では、開発や研究部門といっても、実際に新たな技術を生み出しているひとたちは少数です。多くは、サプライヤの技術を選定したり、法規制についての対策をしたりする仕事が大半です。そして、実際に新たな技術を生み出そうと思っても、失敗するリスクを負えない。あるいは大企業は決定までのプロセスが異常に遅いので、とてもベンチャーには勝てない。そうすると、どうなるかというと、外部の企業を買収する道しか残されていません。
だから、米国の技術を日本流にアレンジして、それを、開発が遅々として進まない大企業に売却することこそ、「現代の錬金術だ」という話です。
私は、企業の研究部門が金持ちを「産んだ」と皮肉なタイトルをつけました。産む、という漢字を使ったのも意図的です。しかし、この話はほんとうに示唆的でした。決断できない、遅い、誰もリスクを負わないといった体質が、金持ちを誕生させています。私はどちらかというと、大企業を支援する機会ばかりです。だから、正直にいえば、大企業の悪口はいいたくありません。
ただ、それでも大企業の意思決定がもっと早ければなあ、と思うことは多々あります。むしろ、スピードがあがるだけで、かなりの問題は解決するのではないでしょうか。そして、みなさんも自社の開発や研究部門にたいして、同様の感想をおもちかもしれません。
そしてやはり私が危惧するのは、「各社の独自技術を高めるためにサプライヤに協力してもらう」のではなく、「サプライヤの技術をアレンジするだけ」の傾向がどんどん高まっている点にあります。
みなさんの会社は事情がさまざまでしょうから、一般論としての教訓を引き出すつもりはありません。しかし、せめて調達・購買部門の方々は、政治思想家であるマキャベリがいった言葉は覚えておく価値があるでしょう。「外国人と傭兵に頼る国家は衰退する」。
野暮なので、意味を説明することはやめます。ところでみなさんはどう思うでしょうか。