これからコスト削減はバカげた活動になるのか(坂口孝則)

オリンピック後やコロナ後に向けた予想を目にする機会が増えました。

米国サプライマネジメント協会の会長も務めたリッチ・ワイズマン氏は、コロナ後における調達活動について、きわめて示唆に富んだ警告を発しています。なおコロナ「後」と書きましたが、コロナと共生の意味でとらえてください。

1.インフレの到来

全体的に市況価格が上昇しているのは間違いなく、あきらかに需要と供給のバランスが崩れているといいます。昨今の木材バブルがいい例です。また半導体、樹脂(ナフサ)なども同様の傾向にあります。

このようなタイミングでは合理性のないコスト交渉は逆効果になります。安定調達を第一の目標として設定する必要があり、コスト削減よりもコストアップ回避が調達部門の評価指標となりえます。

2.調達網の混乱

先日は、中国が世界第三位の寧波舟山港を部分停止しました。貨物運賃は異常なほどに高騰しており、この状況でさらに港が停止した影響はまだ正確に把握できていません。これは上のインフレにもつながる流れです。

この港の部分停止は、たった一人の労働者がコロナ陽性になったからでした。ほんとうに一人だけだったかどうかは不明です。ただし、いまだにコロナのリスクが小さくないと気づかせる出来事でした。

リッチ・ワイズマン氏は、複数の調達ルートだけではなく、スポット市場を活用することと、新規サプライヤの探索の機会につなげていかねばならないと主張しています。

3.サプライヤ事業変更

コロナ禍は世界中の企業を震撼させました。立派な企業も、すぐに倒産してしまうのです。企業はリスク分散の重要性を学びましたが、リッチ・ワイズマン氏はこれからが本番だといいます。サプライヤは利益性の低い製品を生産する余裕はなくなり、事業として切り捨てる可能性があります。

これまで「サプライヤにも適正な利益を確保させろ」という言葉は倫理観から生じたものでした。しかし、これからは買う側も売る側も儲けられなければ、継続的な調達が難しくなっています。気持ちの問題ではなく、実利的な問題になっているのです。

そのため、調達戦略は再考せざるをえず、契約の見直しや中長期的調達戦略、リスクマネジメントの再定義などが必要になってきます。

ところで私(坂口)からのコメントです。私はKKD(勘と経験と度胸)に頼る調達業務を、J-POPならぬJ-調達と名付けたいと思います。私は上の意見に完全に賛成ではありませんけれども、すくなくとも合理性のないコスト削減や、調達交渉は時代遅れになったとは思っています。私はさらに冗談で、三密調達(密室・密談・密約)のスタイルから脱皮のタイミングでしょう。

単純な価格交渉から、理屈と施策のあるコスト削減へ。大きな疫病のあと、世界は価値観を変えます。

タイトルを回収します。「これからコスト削減はバカげた活動になるのか」。おそらく、「これまでの古いコスト削減はバカげた活動になる」でしょう。世界が答えを出すまで、もう少しです。

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