サプライヤ点検のススメ

1年前に話したことが実現しました。しかも、不幸な形で。この文章を読んでいる方々の多くが、私の講演や研修を受講なさったことがあるので、覚えているかもしれません。私は「10年に一度の倒産ラッシュがやってくるので、取引先の倒産防止に取り組まねばならない」と言い続けてきました。理由は、これまでの歴史を紐解けば、10年以上の好景気が続いたことはありません。

私もまさか新型コロナウィルスによる不景気とまでは予想しませんでした。しかし、皮肉ながら不景気は実現してしまいました。

<やるべきこと① 取引先決算書調査>

取引先の最新決算書を取り寄せましょう。そのうえで、緊急調査項目は次のとおりです。売上高÷12で月商を計算してください。そのうえで、貸借対照表上に記載されている「現金及び預金」を見てください。どれくらいの現金を保有している企業かわかります。突発的な状況でのサプライヤの強固さがわかります。理想は、現金及び預金を1倍以上もっていることです。可能ならば、月商の3から4倍の現金を有していることです。さらに理想は5倍です。つまり、売上の1ヶ月分ていどをもっていなければ、主要顧客が倒産してしまったら1ヶ月も持続できないことになります。またコロナ不況で売上高が激減してしまったときの「耐えうる」期間を示します。可能なら3から4倍をもつことです。企業は現金さえあれば潰れません。

<やるべきこと② 取引先対応>

経済産業省は緊急声明を発しました。「親事業者においては、今回の新型コロナウイルス感染症の発生に伴って、下請事業者に対し、①通常支払われる対価より低い対価による下請代金の設定、②適正なコスト負担を伴わない短納期発注や部品の調達業務の委託など、負担を押しつけることがないよう、十分に留意すること」となっています。

<やるべきこと③ 取引先支援>

すべてをフル動員して、この局面を乗り切らねばなりません。もし上記①の結果から、あぶない可能性がある取引先があれば、すぐさま状況確認を確認しましょう。そして、セカンドサプライヤの選定や、金型など貸与している固定資産の状況を把握すると同時に、取引先支援の窓口を知っておきましょう。

中小企業の相談窓口一覧
https://www.meti.go.jp/covid-19/sodan_madoguchi.html

中小企業の保証制度
https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228001/20200228001-1.pdf

雇用調整助成金の特例
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09477.html

時間外労働等改善助成金の特例
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000602479.pdf

新型コロナ感染症で影響を受ける事業者の皆様へ
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
(「サプライチェーンの毀損等にも対応」という箇所だけでもお読みください)

<やるべきこと④ 冷静な行動>

現在、日本国内では「PCR検査を国民に受けさせていないので、感染者数が低くなっているのだ」と批判があります。そうかもしれません。しかし、重篤な方以外は、陽性とわかっても、病床数が足りないので、どうしようもないのが事実でしょう。ただ、死者数はごまかせません。人口あたりの死者数で見れば、新型コロナウィルスを原因とするものはさほど多くないとわかります(ちなみに、死亡原因の推計は問題が多いのですが、それを知りながら、あえて申しています)。

まだ冷静になるのは早いかもしれませんが、それでも、企業活動は冷静に判断したいものです。私が信頼するデータ解析の株式会社データビークルは、会議やセミナーや、あるいは人の集まりについて、このような指針を出しています。

・手洗いがまだの人は手を洗ってきてください
・マスクには明確なエビデンスがありませんが着用は自由です
・本日あるいは数日以内に風邪のような症状がある方はご帰宅いただくか、どうしても参加されたい場合は他の方から距離をおいておかけください
・ご高齢の方や持病をお持ちの方はご自身でリスクを判断なさってください
・ご帰宅された場合も本日の内容は改めて共有させていただきますので遠慮なくお申し付けください

と同時に、景気は感情に左右されます。倒産する取引先が続出することがないように、ぜひ、①のサプライヤ点検をおすすめします。(坂口孝則)

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