サプライヤをどこまで調べるか問題、花王は凄い
コンサルティングをしていると、悩まさせられるのは、サプライヤ調査をどこまでやるか、という問題です。反社チェックやCSR対象、あるいはサプライヤの労働、人権、衛生環境などの調査をする際。ティア1だけではなく、ティア2、ティア3と調査するほうが良いと決まっています。ただし、莫大な時間もかかるので、徹底できません。
しかし、それでも、やはりサプライチェーンの全工程にわたって、調査をやらねばならない潮流です。
そこで一例をあげます。パーム油です。パーム油はアブラヤシの果実から搾油されます。加工食品やら、洗剤やら、マーガリンなどに使われます。アブラヤシ農園(プランテーション)は、効率的に運営したいため、どうしても新興国において児童の強制労働や低賃金、人権侵害などが問題となります。
そこで紹介したいのが花王の素晴らしい取り組みです。同社は、国際的な認証制度に適合したパーム油に切り替えると宣言しています。サプライヤの拠点は全世界に3000もあります。同社はもちろん、サプライヤへアンケート調査を行い、ティア2、ティア3などのサプライヤと、その工場リストを構築しました。
同社がすごいのはこれからです。精製工場、搾油工場、パーム農園と追っていきました。さらに、アンケートやヒアリング調査では限界があったので、なんと衛星写真を活用して、納品元を突き止めていったのです! スパイ映画かよ! ほんとうにすごいなあ。
天然林伐採画像を見て、おおむね想定できる範囲の工場を探し、そこから野焼きの痕跡などを探していったのです。
実に感動的で、ここまでやってくれるなら花王は信頼できると思いますよね。それにしても、こういう想像を絶することまでやらなきゃダメだとは、考えさせられますね。ただ、潮流のなかで、私たちはおそるべきところまでサプライヤ調査をせねばならない時代にはいったようです。(坂口孝則)