【衝撃】調達部員の生産性はほんとうに低いのか
EUに出張で行った際、あまりにも彼らがゆっくりしているので驚きました。ランチに2時間くらいかかって、夕方の早い時間から夕食をとります。もっとも、日本から私たちがやってきたから歓迎してくれたのでしょうが、のんびりしているな、という印象でした。米国人は、ひとによってさまざまで、猛烈に働いているひと、ダラっとしているひと、どちらもいました。アジア人は、みなさんも経験あるでしょうが、牧歌的な空気が流れています。
という経験から、私は日本人の勤務態度は、世界に誇って良いものだと信じています。もちろん会議は多く、ムダな根回しも必要です。無意味なパワーポイントの資料などがあふれているのは反省すべきでしょう。
ただ、昨年から、働き方改革の議論で話題になっている、日本人の生産性が低いというのがどうしても信じられません。直感的に考えるとダメなケースもあるんですが、やはり直感的に考えて、私が見てきた他国の労働者とくらべて、そんなに低いはずがない。そもそも、生産性とは、付加価値を従業員数で割ったものです。ということは、利益が大きいものを生産している企業の場合、この生産性が高くなります。ただ、日本と、さほど変わらない生産物を製造している国なのに、日本よりも圧倒的に高いのは違和感があります。
具体的に見てみましょう。国際的にみた日本の製造業の労働生産性は、9万9000ドルだそうです。いっぽうの、欧米の国々は、1
0万ドルから14万ドルです。しかも、この2010年から2016年に大きく順位を落としています。
しかし、ここに問題が二つあります。労働生産性は国際比較のために、ドルベースになっていることです。2010年から2016年にかけて、為替は円ドルベースで2割以上、円安にふれています。これは厳密な計算ではありませんが、日本の9万9000ドルを1.2倍すれば欧米に近づきますよね。そして、もう一つの問題は、闇営業ならぬ闇労働です。つまり、統計には出てこない、労働者たちが存在します。正式に雇用されず、いや、帳簿にも載らないような移民労働者などの存在です。F・シュナイダー氏の調査によると、アジアでは4割ていど、OECD加盟国でも17%くらいに登ります(!)。つまり、それだけの人数が、分母で計算されていません。
それらを計算すると、日本人の生産性はさほど悪くないと試算できます。ちなみに上記の事情を議論している会社を私はほとんど知りません。
なお、調達・購買の業務で見てみましょう。私は、勝手ながら、EU各国の調達・購買部門は仕組み化、マニュアル化するのが得意。ただ、なんだかあんまり現場に興味なさそう。米国はプレゼンテーションに命をかけている。なんでもリスト化するのが好き。でも、あんまり技術的には興味ないのかな、という感じ。日本人は、令和の現在でも、まわりくどい会議や打ち合わせが好き。
ということで、私は日本の調達・購買部門の業務がこのままで良いとは思っていません。働く時間の長さはいまだに問題です。つまり、一人あたりの生産性はさほど悪くないけれど、時間が長いのです。長時間労働の是正と、慣例でやっている各種ミーティングの廃止。最終的には凡庸な結論です。しかし、真実はいつだって、平凡のなかにあるに違いありません。
それと、つねに、数字で考え、数字の背景を丁寧に考えていくのは重要ですね。
(今回の文章は坂口孝則が担当しました)