「安値世界一への挑戦」はマヌケな調達戦略
かつて「連鎖倒産防止マニュアル作成に係る検討委員会」が行ったアンケート調査によると、仕入先(調達先)にたいして調達限度額を設定していたのはわずか8%弱にすぎませんでした。
特に設けていないが66.3%
不明・知らないが19.2%
1社ごとに設定しているが7.9%
会社全体で取引高の上限を決めているが5.4%
その他が1.2%
という比率です。なるほど自社商品の販売先に関しては、おそらくどんな会社も限度額設定を行っているはずです。それは焦げ付くと死活問題だからです。ただし、仕入先(調達先)の場合は、自社が支払わないだけだから、限度額設定は不要とでもいうのでしょうか。
しかし、リスクの観点からは、限度額や与信限度額を設定する動きをとるべきでしょう。安価なサプライヤから調達するのはいいのです。しかし、「安値世界一への挑戦」といっても、その調達先が倒産してしまったら意味がありません。直感的にも、資本金1000万円ていどの会社に、100億円の発注が難しいとわかります。一つ間違ったら大変なことになる、と。
では、その上限設定はどうすればよいのでしょうか。
結論から書きます。経常利益が4%以上のサプライヤと、経常利益が4%未満のサプライヤにわけてください。
経常利益が4%以上のサプライヤは、その経常利益率から2%を引き、そしてサプライヤの3年平均年間売上高をかけてください。たとえば、経常利益率が5%で、平均売上高が1億円ならば、300万円です。
経常利益が4%未満のサプライヤは、2%にサプライヤの3年平均年間売上高をかけてください。たとえば、経常利益率が1%でも3%でも、平均売上高が1億円ならば、200万円です。
これが最大の買掛金限度額です。これは、最大買掛金といってもよいでしょう。ですから、買掛金がこの金額を超過してしまうと、気にしておきたいところです。買掛金の意味もわからないひとはいないでしょうが、大胆に説明すると、12ヶ月のうち、この金額=最大買掛金を超えないていどの調達がふさわしいということです。
これは、年に1回の焦げ付きがあったとしても、サプライヤに支障がないことを前提としたものです。ですから、不安定な業界だとすると、もっと厳密に計算する必要があります。前者はなぜ2%を引き算するかというと、もしその損失分が生じたとしても、最低2%は健全のために確保するためです。
正直、よくわからないひともいるでしょう。だから、結論だけ覚えておいてもじゅうぶんです。「経常利益が4%以上のサプライヤは、その経常利益率から2%を引き、そしてサプライヤの3年平均年間売上高をかけてください」「経常利益が4%未満のサプライヤは、2%にサプライヤの3年平均年間売上高をかけてください」。疑問がありましたら、有償相談を受け付けていますが、このていどは書籍を何冊か買って学ばれた方が安上がりだし、絶対に身につくと思います。念のため。