【必見】サプライヤから調達部門が評価される日
私の知人が編集長を務める東洋経済新報社ですが、今週の週刊東洋経済(2018年12月1日号)に面白いレポートが載っています。それは「全国民の信用情報を政府当局が一元的に管理」というタイトルのものです。芝麻(じーま)信用という仕組みがあり、これはアリババのサービスです。アリババが提供するサービスを使った際の情報や、納税、年金の受け取り、公共料金の支払い、各種ローンまでが対象となります。
芝麻信用では、さらに支払履歴にくわえて、学歴や趣味、知人情報までを踏まえて点数化するものです。350点から950点までで、800点以上はかなり珍しいといいます。それにしても、信用力の高い知人たちとも付き合うべきとされており、点数はそれによって上昇します。「娘さんが結婚相手候補を連れてきたら、芝麻信用の点数を調べなさい」とまで、アリババのジャック・マーは語っています。
なんだか怖いと私は思います。しかし、点数が高かったら、積極的に見せたくなる動機もあるのでしょう。実際10月に、私が中国に出張した際、通訳ガイドは、700点台後半の芝麻信用スコアを自慢げに見せてくれました。中国人の何人かに訊いてみたところ、比較的、好意的にとらえていました。
この芝麻信用は、きたるべき、全員スコア社会の嚆矢にすぎません。LINEも同様のサービスをはじめると発表しました。これからは、食べログのように、個人や会社がスコアリングされる時代がやってきています。それによって、これまで見えなかった内容が一気に見える化します。さらに、これは企業間取引でも使われるはずです。
たとえば、点数が高い調達・購買部門(企業)は、納品してもらいやすくなったり、あるいは売り込みを受けるようになったりします。逆に点数が低い調達・購買部門(企業)は、誰も近寄らなくなる、というわけです。点数が高ければ、多少、安価な価格であっても売りたいというサプライヤは増えるでしょう。ただ、点数が低ければ、もう売りたくない、というわけです。
これまで調達・購買の倫理とは、比較的に、コンプライアンスの観点から語られました。しかし、芝麻信用に見るように、もはや実益として倫理が語られるようになります。これは、「感情」から「勘定」への大きなシフトです。自分がトクするために、他者にちゃんと優しくするという態度。それは功利的かもしれませんが、総信頼度スコア時代には、きっと「どの企業は何点」とわかるはずで、調達・購買部門にとっては、その点数の向上を目指したブランドマネジメントが必要となるでしょう。だって、点数が低かったら、誰も働きたがらないかもしれませんよ。
ところで、信用スコアの信用性そのものが正確かどうか、議論の余地があります。私は、芝麻信用の点数が高いと自慢してきた通訳ガイドの話をしました。しかし、旅程中に、二回ほど、彼に買い物をお願いしたんですね。その二回とも、お釣りを返そうとはしませんでした。夕食の際に、ビールもたらふく飲んで、会計時には一切、支払おうとしませんでした。
取るに足らない金額です。しかし、このような人間の信用スコアが高いなんて笑っちゃいますね。