必要なのは、調達部門同士の競合だ

コスト削減をねらおうと思えば、やはりサプライヤ間での競合は欠かせません。いわゆる、相見積もりです。もちろん、分野によっては生産キャパが追いつかず、納入を第一に考えるべきかもしれません。ただ一般的には、サプライヤ同士で競ってもらうことで、最適な価格を引き出せます。

この競合、競争、というのはやはりすごい。

このところ、旧社会主義国(社会主義の意味がわからないひとは調べてください)をまわっていたのですが、資本主義国家にくらべて、やはり発展が遅れています。人間というのは怠け者ですから、競争がなかったら能力を向上させようとしません。他者と競う状況になって、サービスのレベルや、そしてスキルを向上させようとします。

ところで、私が思うに、調達部員は競争や競合の大切さを骨身にしみて知っています。しかし、本人の調達部員たちこそ、「レベルが低い」とか「スキルがない」などと言われています。どうすればいいでしょうか。これは、私がよく話しているように、調達部員そのものを競合に晒すことによって解決します。

私はこれを「調達部の分割論」と呼んでいます。文字通り、部門を二つに分割すればいい。調達部の仕事を、「他部門に、調達サービスを提供する部門」と定義するわけです。サービスを提供するのですから、より多くを受注できたほうが優れているはずです。それで、その二者で、どちらが他部門から評価を得るか競えば、おのずと業務レベルや、スキルは向上します。そして、他部門から支持を受けた配分で予算を決定すれば、人員の入れ替えも進むでしょう。

ルールとして「年に一度、それぞれの調達部門は、他部門に戦略をプレゼンテーション」することにしましょう。

これにより、他部門は、どちらの調達部門と一緒にタッグを組みたいか決められます。もちろん、中長期に組む相手が決まるでしょう。しかし、重要なのは、調達の戦略が評価に晒される点にあります。それぞれの調達品の戦略をめちゃくちゃ真面目に考えるでしょう。

スター・バイヤーも生まれやすくなります。「佐藤くんがいるのであれば、こっちの調達部にお願いしよう」など。これまで隠蔽されていた「調達部員間格差」が明らかになります。ワクワクする人もいるでしょうし、ワクワクできない人もいるかもしれません。しかし、社会とは、そもそも厳しいものですよ。

たとえば、「明日まで特定の部材を集めなければいけない」といった絶体絶命のときに、もういっぽうの調達部に、「かき集めのプロ調達部員」がいたら、その場合は例外的に依頼できるなどルール策定は必要でしょう。また、細かなルール設定が必要なのは、いうまでもありません。しかし、繰り返すと、私が申し上げたかったのは、調達部員同士が競うことのメリットです。それにより、全体の能力向上が図れるはずです。なにより、健全な競争が人々を育てるのは、これまでの歴史が証明していることです。

私が思う、調達部門に関する成長の劇薬についてお話しました。

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