有名人になる方法~調達・購買関係者へ
メーカーでの調達・購買担当者を経て、コンサルタントの真似事をはじめたとき。たとえば講演会のスピーカーとして呼ばれたとき、そしてテレビにコメンテーターとして出演したとき、あるいは企業のコンサルティングを請け負ったとき。
「あなたがもっとも若いね」
と言われ、恐縮したのを昨日のように思い出します。テレビのスタジオでカメラがまわりはじめ、幼いころにテレビの画面のなかで見ていた人びとと共演しているとき、ふと「なぜ俺はここにいるのだろう」と思う瞬間があります。30そこそこで多くのメディアに関わるようになったとき、「共演者のなかで、あなたが一番年下だよ」と言われました。
また、大企業のコンサルティングを請け負ったときに、「普通は大手コンサルティング会社にしか依頼しない。しかも、ベテランのコンサルタントが多い」と言われ、やはり「あなたがもっとも若いね」といわれました。
10年は一昔といわれるものの、目の前の業務に七転八倒していた日々を、私は「昔」どころか、ついさっきまでの「現実」かのように感じるのです。10年とは、世間で「失われた10年」と語られた期間のことではなく、世界貿易センターが爆破されてアメリカがイラクで戦争を開始するまでの期間のことではなく、武満徹氏が「弦楽のためのレクイエム」から名曲「ノヴェンバー・ステップス」を生み出すまでの期間のことではなく、このことだったのです。
そもそもバイヤー、調達・購買担当者とは、相手にギリギリを迫る仕事です。調達・購買担当者とは、自分一人では何もできません。あくまで社内や社外の協力があってこそ成り立つのです。
相手様の成果をカネで買い、自社生産につなげるという、いかがわしい仕事でもあります。そのためには、こちらの真剣度こそが重要だろうと私は思ってきました。
さきほど、「ギリギリを迫る」といったように、「おたくはこの見積り価格が精一杯か。このままでは海外勢に負けるぞ」といったような脅しにも似た問いかけをし、決断を迫るわけです。そのときにサプライヤの一人ひとりと、大げさに言えば、魂を削り合う関係を構築できるかが重要だと思ってきました。
「俺は真剣に査定する、そして選別する。それについてこれますか」
というわけですから、何よりも自分自身の必死な学習や研鑽、努力が必要だと思ってきました。サプライヤにとって、原価明細を明らかにしてそれをバイヤーと話しあうなど、もっともやりたくない行為です。しかし、それをやらせねばならない。だから、何よりも真摯さが必要です。
私はいつも、すぐれたビジネスマンについて次のような要件を想定しています。
①卓越した努力をしていること
②高すぎる目標に挑戦していること
③同時に、不可能なことは明確にし、代替案を提示できること
④誰も真似できない<極端さ>があること
違う言葉を借りるなら、自分の仕事領域のすべてで「あなたがもっとも若いね」と言われることを一つの到達点としてきたのです。みなさんも、具体的な目標がなければ、このような目標設定はいかがでしょうか。