なぜボンカレーが調達を根源から変えるのか
大塚食品をご存知でしょうか。ボンカレーを生産している会社です。個人的に、ボンカレーには相当お世話になっています。なお私と仕事上の関係はありません。そして、クラウドワークスをご存知でしょうか。これはインターネットを通じて、日本じゅうの個人に仕事を依頼できるサービスです。当手法をクラウドソーシングといいます(ワークスではなく、ソーシング)
その二つが関係をもったのは2014年のことです。国民食ともいえるボンカレーのキャッチフレーズを応募したのです。これってすごいですよね。宣伝部もいるし、これまでお世話になっている広告代理店もいるし、それに多くのクリエイターを抱えている。そのなかで、クラウドワークスを使って募集したわけです。
秀逸な作品がすぐさま5000件ほど集まったのですが、驚くのはその費用。実に10万円しかかかっていません。かっこよく、調達・購買の世界では、サプライヤを決めることをソーシングなどといいます。
その意味で、ソーシングは、あらゆるところからできるようになりました。馴染みの取引先だけではなく、クラウドワークスを使って、全日本、全世界を股にかけることができるのです。
私はかつて「LCC(ローコストカントリー)」の次は「LCB(ローコストバイヤー)」の時代がやってくるといいました。日本人の調達・購買担当者は給料が高い。それならば、アジアやアフリカの安価な人材に仕事を奪われますよ、と警告を鳴らしました。
それはもちろん、「仕事を奪われないように付加価値をつけましょう」という意味でした。しかし、これほどインターネットを使った業務委託が容易になれば、LCBを通り越して「LCO(ローコストアウトソーシング)」の時代がやってくるかもしれません。
つまり、社内の調達担当者をすっとばして、クラウドソーシングを使って、調達業務が委託される日が近いかもしれません。その意味で、私は恐怖を感じたのです。
ほんとうは契約や法律上の難しい問題はあります。しかし、それらの一部をあえて無視すると、次のような未来がありうるでしょう。
・図面を公開し「コスト計算をしてください」と査定を委託する可能性があるでしょう。たとえば、細かく図面を分解し、市況から読み解くのです。そうすると、調達担当者よりも正確に速く査定できるかもしれません。
・図面を公開し「サプライヤから見積書を入手してください」という可能性があるでしょう。各国にいる人たちが地場の産業ネットワークを使って見積書を入手するのです。
・サプライヤ監査を委託する可能性があるでしょう。すべてコストにまつわる側面から見てもらうのです。サプライヤ工場ごとの「機器名」「設置年」「賃率(想定)」などを細かく記載してもらえば、相当なデータベースになります。
・開発購買の委託にも可能性があるでしょう。仕様を渡し、最適な部品類の提案をしてもらう。そしてコスト面からもトータル費用が安価になる提案を行い、それを社内設計者と検討するのです。
委託する相手が世界中に広がっているとすれば、それだけ可能性が広がります。しかし、そのとき、調達担当者は、どのように付加価値を高めればよいでしょうか。もちろん、旧来的な仕事ではダメです。
あえて抽象的に終わるとすれば、これから求められるのは、外注できない仕事です。外注できない仕事とは、つまり、マニュアル化できない仕事でもあります。
ところで、あなたの仕事はマニュアル化できる仕事でしょうか?