地獄の日々⑤

あまり本質的な話ではないと思われるかもしれませんが、会社を作った当時、私の子どもが小さかったんです。いまでも小さいのですが、当時は産まれたばかりでした。ちゃんとしなければいけませんでした。もちろん、高校生のほうがよっぽどお金はかかりますが。

私は常々、「人生で、二つの選択肢で迷ったら、大変そうな方を選べ」と考えています。そっちのほうが、きっと人生の中長期的な学びとなるからです。しかし、その大変さの中にいるときは、ほんとうにしんどい。

会社をはじめてから、「意識しない節約」を心がけました。節約というのは、すでに浪費体質になっているひとが、意識して支出を切り詰めることです。それは長続きしません。

以前の会社では、たとえば、オリジナルの封筒を作っていました。でも、そんなの必要でしょうか? 必要かもしれません。でも、私が逆の立場だったら、なんでもかまいません。ですから、いまでも、市販の封筒に、ゴム印を押して送付しています。

会社案内もいりません。というのも、逆の立場で、会社案内を真面目に見たことも、保存したこともないんです。だから、しぶしぶパワーポイントで一枚だけ資料を作りましたが、パンフレットはいまだにありません。

しかし、たまに形式を重視するひとがいて、障害になります。たとえば、セミナーを開催して、請求書を送ると、「会社案内と全部履歴証明書を送ってくれ」といわれるケースがありました。こちらがお願いしてコンサルティングを売り込んでいる場合ならまだしも、先方から申し込んできて、こちらに要求するというのは面白い(というのはヘンですが)話です。そのときに「いや、会社案内はありません」というと、なんか作ってください、となります。

その他、電話番号とFAXの登録を求められるケースがあります。しかし、これも考えて、電話には出ないことにしました。ほとんどオフィスにいないので、電話を取られないのです。ワンコールで留守電につながるようにしました。それで「メールで連絡してください」というのですが、それでもなお、電話狂のひとたちは電話をしてきます。これも困ってしまいました。

また、困るのは、打ち合わせの依頼で、「部長お会いしたがっています」というものです。具体的な内容を聞くと、本人から詳細はお話します、とあります。「でも、どんな内容なのか、教えてください」といっても、なかなか聞けないのです。たぶん、部下が上司に聞けない雰囲気があると思います。人を打ち合わせに呼ぶと、コストがかかるという基本認識が共有されていません。調達・購買担当者なのに……。

http://www.future-procurement.com/consulting

そこで、上記のコンサルティング紹介では、情報交換を目的とする場合は連絡しないでください、と書きました。酷い書き方です。

しかし、面白いことに、こう書くと逆に真剣なひとのみが集まってきました。かつて、講師業をはじめるときに、「お客が真面目であるためには、どうするべきか」と問いを立てました。だって、真面目な人に講義したいじゃないですか。すると先輩から「お客は講師に似る」と聞かされました。だから私はずっと真面目に考えて講義をしています。コンサルティングもそうなのかもしれません。真面目にやっていれば、真面目な顧客が集まる。

私の試行錯誤は続いていました。

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