緊急事態宣言をチャンスに変える調達業務(坂口孝則)

個人的な話です。以前、農家の方にお話を伺ったところ、「多くの農家は、味をよくしようと思わない。なぜなら農作物の重さだけで買取価格を査定されるから」とおっしゃっていました。うむ、これは面白い、と思いました。なぜなら調達業務に通じると感じたからです。

伝統的には、調達品の価格を査定する際、工場の工程だとか人工だとか材料費とか設備コストなどを気にします。当然ではあるものの、あくまでコストを査定するのであって、価値を査定するものではありません。このところ、だいぶ変わったとはいえ、いまだに多くはコストを査定します。

だから「これはコストが10円しかかかっていないが、お客は100万円の価値を感じるから、サプライヤに値上げしてやろう」といった裁量はあまり発揮できません。

しかし、ITベンダーに「おたくはサーバー代コストなんてほとんどかかっていないだろうから、安くしろ」といったら、きっと「何をいっているんですか。それなら買ってもらわなくて結構です」といわれるだけですよね。もはやコストではなく価値に移行している分野があるわけです。

私は調達が未来に何を買うのか、ずっと興味がありました。

さらに個人的な話です。緊急事態宣言やまん延防止措置などで、通勤時間が減りましたので、私は空き時間を使って実験をしました。自分自身で最先端の商品を売れないかと。そこで私は原稿の所有権を売ってみることにしました。私は毎週、週刊プレイボーイで連載をしています。その原稿全文を読み込んでQRコードにしました。それをOpeaseaというプラットフォームで販売してみました。QRコードアートと名乗りました(笑)

もしかすると、みなさんはブロックチェーンという言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは複数のコンピュータに取引履歴を書き込む技術です。私のQRコードを入札したひとがいたら、それはブロックチェーンに記録されます。誰にも改ざんはできません。

でも不思議です。というのは、QRコードは商品ページに掲載されています。ですからQRコードを読み込めば、誰だって原稿は読めます。複製もできます。私が販売したのは、デジタル上で保障された所有権です。このQRコードを保有している、という仮想空間上の権利です。これらの仕組みを最近では「NFT(ノン・タンジブル・トークン)」と呼ぶようになりました。

実態がない情報にすぎないどころか、複製すら可能なデータです。信じられないことに、私のQRコードに2件の入札がありました。私たちはいったい何を売り、そして何を買っているのでしょうか。なおツイッターのCEOが世界初の「つぶやきを所有する」権利を3億円で売りました。仕組みはおなじです。誰だって、そのつぶやきを見ることはできます。でも、ブロックチェーンで付与された所有権を世界の誰かが3億円で買ったのです。意味がわかりますか?

さて、ここから話が展開します。

緊急事態宣言等がなければ、きっと私はこういった実験をしなかったと思います。実は、現在、数件の実験を進めており、それらも後日に公開予定です。

現在、多くの方が在宅勤務となっているでしょう。そのとき、コミュニケーションが難しいなど負の側面はあります。しかし、嘆いてもしかたがありませんので、この時間を活用して将来につながる学習や試行錯誤をしてみませんか。これが私からの提案です。

これを機会に、調達業務でいえば帳票類の整備、需要予測の学習、AIやRPAのトライ、在庫設定の見直し、情報基盤整備など、無数にやるべきことがあるのではないでしょうか。また、通常時なら読めないような難しい書籍に挑戦するのもいいでしょう。あるいは提案資料をまとめたり、プロジェクトの企画書を書いたりと、いましかできないことを探してみてください。

なお、私からも緊急事態宣言中に学習できるコンテンツをまとめました(無料のものを含みます)。

【①緊急事態宣言を成長のきっかけにするために】

http://www.future-procurement.com/covid19readinglist.pdf
↑↑
学習のためのコンテンツをまとめました。

【②新人と新任管理職へ向けたメッセージ】

https://www.goabroad.jp/messe
↑↑
同僚の方に上記のURLを転送いただければ幸いです。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい