営業部門とつながりを強化する調達・購買部門(牧野直哉)
「調達・購買部門の上流関与」は、従来そして今も「開発購買」や「VE・VA」といった言葉で語られ、あらゆる企業で取り組みが行われてきました。私はこれまでの取り組みに、1つ不十分な点があると考えました。
「開発購買」は、購入内容の決定プロセスに調達・購買部門/バイヤが関与します。購入内容が決定してしまうと、購入価格のコスト80%が決まってしまいます。購入内容の決定プロセスに積極的に関与し、コスト要素の80%を占める購入条件の悪化を防ぐ取り組みです。これは主に購入する「内容」への関与です。仕様や図面、レシピだけではなくサプライヤやマーケットの現況をふまえバイヤ企業に独善的な購入内容を回避します。「開発購買」のセオリーは、今でも十分有効。しかし、せっかく調達・購買部門が上流工程に関与しようと思い立ったとき、仕様や図面、レシピだけを対象とするのは不十分です。
以前と変わらない要求内容であったとしても、原材料費や人件費の高騰によって値上げ要求対応を強いられる。需要過多によって希望する数量が手に入らない半導体に代表されるモノ不足。こういった今の調達・購買部門の置かれた状況は、購入内容でも、価格や購入数量、タイミングの部分。こういった内容は、購入要求部門に価格や購入量、タイミングについて確認が必要です。
直接材の場合、顧客やその先の市場動向を、営業部門を通じてしっかり掌握、社内で共有化し、サプライヤへ手配する内容の決定が必要です。直接材は、価格派原材料費や人件費の上昇部分の負担を顧客へ営業部門を通じて申し入れる。購入量やタイミングであれば、やはり顧客の需要動向をしっかりつかんで自社の手配や生産計画へ反映させる。間接材は、日常的に使用するアイテムなら、仕様見直しによって価格変動を抑える。設備投資は、タイミングをずらす(後ろ倒し、タイミングによっては前倒し)といった取り組みが有効。購入内容、価格、量、タイミングの全てで、上流工程からいち早く情報を入手して、サプライヤの現況をふまえた「先手」が、円滑な調達・購買活動に不可欠になっているのです。
購入内容や量、タイミングを上流工程が決め調達・購買部門に提示、その内容通りに手配すれば良い時代は終わりました。思いどおりに調達できない事態の回避には、おのずと以前よりもより情報源から、早期に確実な情報の入手が欠かせません。
調達・購買部門と営業部門は、かたや買うこと、もう一方は売ることが目的です。購入代金とモノやサービスを交換すると考えれば、立場が真逆に異なるだけ。お互いが双方をサポートしながら協力して会社目標に臨めば、より達成に近くなる。言うなれば、調達・購買部門の上流部門業務への関与は、従来の購入内容を決定する「ソーシング」部分での関与では不十分です。購買実行部分「パーチェシング」にも注目してより確実性の高い情報を入手する重要性が高まっているのです。