「お金を稼げない調達部員」にある残念な考え
今回、大胆なタイトルをあげました。令和時代は、働き方改革は当然として、限られた時間で最大のアウトプットを出すべく奮闘せねばなりません。私はコンサルティングで各社をまわるのですが、やはり優秀で出世していくひとは、「他者の意見を引き出して、まとめて、行動できる」特徴があります。だって、当たり前ですけれども、会議が1時間あるとして、なんの結論も方向性も出せない部員と、ズバッと結論づける部員とでは人材の価値が違いますよね。
しかも、令和時代は、無数の意見を摂取して、新たな知見を得る必要があります。
調達・購買部員の仕事を単純化すれば、「人と会うこと」と「資料を作成すること」です。異論はあるでしょうが、極端にいえばそうです。だから、社内や社外の人と会って、意見をうまく吸い上げて、それをまとめあげる能力が、まずは重要になります。
私はいま、現場の調達・購買担当者ではありません。私はコンサルタントとして、調達・購買部門に乗り込んでいって、できるだけ本音を話してもらって、そこから施策を考えます。そこで、参考になればと思い、社内や社外の人と会って、意見をうまく吸い上げて、それをまとめあげるために重要なノウハウを公開します。これは優秀な調達部員の特徴でもあります。
「お金を稼げない調達部員」にある残念な考え、とタイトルをつけました。正確には、「仕事が上手くいく調達部員」がもつ考え、とでもいっておきます。
1.自分がぶっちゃけないと、他人もぶっちゃけない
私を招いてくれたひとがおっしゃってくれるのは「そこまでいって大丈夫ですか?」というものです。講演やコンサルティングでは、本音をいいすぎて、たまに怒られます。きっと私を快く思っていないひとが多いはずです。でも、こちらが裸にならないと、絶対に、他者は心を開いてくれません。
建前ではこういっているけれど、本音はこうでしょう、と勇気をもって語ることです。そういえば、先日、こういうことがありました。「CSR調達だなんだかなんだとトップは叫んでいるけど、現場は混乱している。どこまで何を実施して、何を調べればいいかも判断できない上司のほうが、よっぽど持続可能じゃない」と叫んだら、拍手が起きました。トップの方々は私に苦々しい顔をしていましたけれど。
2.素直に自分の感情を伝える
まったくご意見をいってくれない関係者と出会います。
「こういう内容について議論したいのですが」
「……うん。とくに意見ないなあ」
「そうですか。たとえば、これについては、現状のままでいいと思いますか?」
「そうだねえ。とくに、変えなくてもいいかなあ……」
こんな感じです。こういうときに必死に頑張ってヒアリングしてもいいのですが、それでも無口な相手はそのままです。以前の私なら質問を重ねていたと思います。しかし、このところ、対応を変えたほうがよいと思い当たりました。正直にいうのです。
「あまりお話いただけませんね。困りましたね。悲しいです」
そして、数秒は沈黙します。これは私の感情ですから、相手を批判しているわけでもありません。正直な気持ちを伝えているだけです。しかし、面白いことに、こういうと、なぜか相手が話し始めてくれます。沈黙を作ったのが自分だという罪悪感からでしょうか。なんにせよ、正直に自分がどう思っているかを伝えるのが良さそうです。
3.言葉遣いが見事
本音をいうときは「いい意味で」とつけるひとが多いんですよね。これはマジックワードで、なんでも肯定的になります。「いい意味で、この前のプロジェクトは失敗でしたね」とか。そこから学びを得ていこう、という意味ですが、「いい意味で」をつけなかったときの響きとはだいぶ違います。
「いい意味で、あいつバカですよね」とか、「いい意味で、あのサプライヤはひどかったですね」とか、聞き手を惑わせて、さらには、語り手の意見をマイルドに届けることができます。
つまり言葉の一つひとつを気にしているんですよ。こういったら相手がどう感じるだろう、と想像しているんですね。少しの時間でもいいので、自分の言葉遣いを気にするだけで説得力やヒアリング力があがるのは間違いありません。これは変な資格を取得するよりも、確実に年収を上げるテクニックです。
それにしても、ある部長さんは、誰かが意見をいうたびに「いやー、好きだな、その意見」といって継いでいたんですね。これは反則だよ。そういわれたら、絶対、そのひとのことを好きになるじゃないですか。反対意見もいえなくなるしね。笑い事ではなく、ほんとうに、こういうささやかなテクニックこそが重要だと思うのです、私は。(坂口孝則)