会議室から出て行けといわれた話
新人として企業に入社し、調達・購買部門に配属されたころ、「会議室から出て行け」といわれた思い出があります。その理由は、「お前の話には、数が出てこない」というものでした。「定量的ではない話は戯言にすぎない」「数の裏打ちがない話は単なる感想のようなものだ」。
私は、ほんとうに良い先輩に恵まれたものです。私はなんでも数で語ろうとします。それも、あのころの過酷な思い出があるゆえです。
ところで、藤田田(ふじたでん)さんの過去の著作が復刻しているのをご存知でしょうか。日本マクドナルドを創業した、伝説の経営者です。復刻した書籍をすべて買ってみました。「Den Fujitaの商法」シリーズです。面白すぎて、驚愕しました。
藤田さんは、すべてを数字で語ろうとする鬼です。たとえば、研究の結果、コーラは摂氏4度にすることにした、とか。ハンバーガーのパンの厚さは17ミリでなければいけない。牛肉45グラムを、厚さどれくらいの鉄板で、何分を何度で焼くとか。カウンターは92センチで、お客を32秒以上待たせたら帰っていくとか。
以前に書かれた本です。これが、現在のマクドナルドのルールかどうかは、本質的ではありません。自分の仕事に、仮説と定量化をもたらした態度こそが重要なのです。書籍のなかは、考え抜かれた定量的ノウハウが詰まっています。
学ぶ気のないひとは、「私はハンバーガー屋ではない」というでしょう。そういうレベルの話じゃないんです。いままで誰も定量化しようとしなかった領域を、なんとか定量化する。それで成功する。そういう姿勢の重要性を藤田さんは説いているのです。
ニトリの創業者である似鳥昭雄さんにお目にかかったときも、数の重要さを力説なさっていました。数字で語ることの大切さは、調達・購買の領域でも、私は強調し続けたいと思います。
調達・購買担当者が目にする数字といえば、見積書、あとはサプライヤの決算書です。決算書にも勘所があります。数字の勘所をみなさん学んでください。(坂口孝則)