恫喝調達ですべては上手くいく

先日、たいへん面白い話を聞きました。みなさんにもご参考になると思います。A社は、B社のパテント(特許内容)を使って、新製品を売り出したいと思っていました。そこで、A社の設計部門と調達部門は、B社へ交渉を繰り返しました。しかし、この手の交渉をなさった経験をお持ちの方はご存知のとおり、なかなか決着しません。

A社の意向は強いものでしたが、いかんせん、B社がなかなか自社パテントを使用することを許そうとしません。その結果、A社とB社は、交渉決別してしまいました。通常ならばこれで終わりです。面白いのは、A社の調達部門は、「相手の理解が得られないから、パテントを使ってしまいましょう」と決断した点。パテントを使わない、のではありません。パテントを「使いましょう」という決断です。

パテントを無断使用するのですから、当然、B社は怒ります。いったい交渉はなんだったんだ、と憤ります。しかし、A社の調達部門は「なぜパテントを使わせてくれなかったんだ!」と逆ギレ。当然、裁判沙汰になります。さらに面白いのは、ここからです。裁判の結果、当然ながらB社が勝利します。そして、裁判では、判決として「A社は、販売数量におうじてB社に使用料を払うこと」と命じられます。

あれれ。

もともと払おうと思っていたものを、裁判であらためて払えと命じられただけです。もちろん払う覚悟はあります。製品の販売差し止め命令があるかもしれません。しかし、裁判は長引くものですから、その時点では、じゅうぶんな数量を販売しているかもしれません。また、裁判ですから、めちゃくちゃなパテント使用料を請求することも命じられません。

つまり、めちゃくちゃな奴らが勝つ世界なのです。この記事の「恫喝調達ですべては上手くいく」とは、もちろん皮肉です。しかし、まわりを見渡すと、声のでかい、あるいはめちゃくちゃな騒ぎを起こす奴が、結果としてゴネ得を享受しています。私は、この現実に、倫理的な良し悪しを述べるのは控えたいと思います。ただただ、現実がそうだというだけです。しかし、現実がそうだからこそ、「とりあえず、やっちゃえ」が、現代では最高の戦略となっています。

もしかすると、上記のエピソードを聞いて、「あ! ゴネたり、めちゃくちゃやったりするのが、トクするんだな」と思われたあなた。残念ながら、半分それは正しいでしょう。中長期的には、めちゃくちゃな調達部門は淘汰されるのでしょうか。もちろん、そう期待するしかありません。

しかし、私は、あくまでルールに則ったうえで、最大のパフォーマンスを発揮しようという企業、ひいては調達・購買部門を応援したいと思うのです。それにしても、びっくりしたなあ。ルールを破るほど利得がある社会だなんて。

(今回の文章は坂口孝則が担当しました)

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