なぜムカつくサプライヤから調達しつづけるのか(牧野直哉)

私たちの周りには「細分化」されたモノやサービスがあふれています。企業が事業活動をおこなう市場も細分化(=セグメンテーション)されています。より小さな規模に市場を分割し、ニーズにマッチした製品やサービスを提供し、企業は生き残りを計っています。

1990年代には「リスク細分化」によって、自動車の任意保険でもさまざまな種類の保険商品が発売されました。年間の走行距離や運転者の年齢によって、保険料が得になる商品です。契約者の特徴から排除できるリスクを特定し、必要な保険料を算出します。相対的にリスクが低いと判断される場合は、保険料が安くなります。

では「細分化」をバイヤーが活用するにはどうすれば良いでしょうか。まず「簡単に判断しない」と心に決めましょう。

原材料に金属を使用している部品を購入するとします。価格の妥当性を判断する基準に重量単価を採用する場合、この基準は限りなく「目安」に近くなります。同じ重さでも、形状によってコストが異なるのは明らかです。したがって、重さに加えてなんらかの基準が必要になります。重さ以外の基準を加え、購入品のコスト要素を細分化して、より現実に発生しているコストに迫る必要があるのです。

細分化の有効性は、コスト分析だけではありません。多くのバイヤーが手を焼いているシングルソースサプライヤの問題。独占サプライヤとか、単独供給元とか、企業ごとにさまざまに呼ばれています。

2016年4月に発生した熊本地震でも、大手自動車メーカーや電機メーカーの工場に被害がおよびました。被災したサプライヤから購入していたバイヤーは、供給断絶の悪夢が頭をよぎったはずです。地震だけではなく、火山や台風による風水害の被害も多い日本では、そういった天災リスクへの対処方法として、代替サプライヤの必要性が声高に喧伝(けんでん)されます。

しかし、これまでの取り組みでは打破できないから、シングルソース状態なのです。なぜシングルソースなのか、その理由を確認せずに、代替サプライヤを無鉄砲に探しても、今までおこなって結果のでなかった取り組みを繰り返すのみです。

一言「シングルソース」と言っても、そこに至る過程には、いろいろな経緯や原因があります。経緯や原因によって、シングルサプライヤを細分化して個別対応が必要です。例えば、ある条件がそろえば、シングルソースサプライヤを問題化せずに、シングルソースサプライヤと関係性を積極的に高め、バイヤー企業内に「すばらしいサプライヤだ」と触れ回るくらいの対応があっても良いのです。なんでもかんでも代替サプライヤの確保が、解決策ではないはずなのです。

では、なんでも細分化して確認を進めるのが得策かといえば、それも違います。

一つの目安は、総購入額の80~90%を占めるサプライヤ以外は、シングルソースを問題にしなくてもいいでしょう。代替サプライヤを設定して、2社以上のサプライヤを管理するよりも、シングルソースサプライヤと想定されるリスクの回避方法を討議し解決策を導くべきです。

細分化する際の切り口を書き出したリストをダウンロードしてみてください。すぐさま表示可能です。

http://www.future-procurement.com/listofonesource.pdf

そして、現在直面している問題で、すでに結論付けている内容を、「細分化」して、根拠を確認し、少し疑ってみてください。半分以上のケースで、必ず新たな仮説が浮かび、新たな事実を目の当たりできるはずです。過去の判断が、極めて限定的な要素でおこなわれていたと実感するはずです。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。(牧野直哉)

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